122:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 15:59:03.02 ID:WuLtuWlB0ゲーセンというものが、俺らの仲をつなぎ止めてくれている。
そんな風に感じた。
ひと通りゲームをして、
喫煙所OR自販機に行って格ゲー談義して、楽しかった。
楽しくて気が合うからこそ、俺は彼女のことを知りたかった。
ゲーセンにいるうちなら、何か話してくれるかもしれない。
俺はそう思っていた。
初対面に会った時も、ゲーセンだからあれだけ意気投合できた。
122:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 15:59:03.02 ID:WuLtuWlB0ひと通りゲームをして、
喫煙所OR自販機に行って格ゲー談義して、楽しかった。
楽しくて気が合うからこそ、俺は彼女のことを知りたかった。
ゲーセンにいるうちなら、何か話してくれるかもしれない。
俺はそう思っていた。
初対面に会った時も、ゲーセンだからあれだけ意気投合できた。
124:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:02:06.69 ID:WuLtuWlB0俺「あの…吹石さんはどうして絵を描き始めたんですか?」
彼女「わたし?んー…お兄の影響かなぁ」
彼女はポロッとこぼした。
ここで俺は初めて彼女にとってのお兄さんの存在を知った。
125:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 16:03:29.98 ID:9rmCJsO90126:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:07:19.96 ID:WuLtuWlB0彼女はハッとした顔だった。
俺「お兄さん…ですか?」
彼女はかぶっていたキャスケット帽を深々とかぶり直した。
俺「なんですかソレ…」
彼女は苦笑う。
彼女「わたしには兄がいるんだよ…。小中学生の時はよく一緒にゲーセンに来たよ。」
彼女「だからわたしはゲーセンが好きになったんだけどね。」
俺「お兄さんもゲーセン好きだったんですね?」
彼女「うんw好きなんてもんじゃなかったよ。」
127:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 16:08:02.53 ID:vEZCC0gL0132:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:13:59.38 ID:WuLtuWlB0133:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 16:16:22.08 ID:RtZ4bQJy0135:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:21:47.40 ID:WuLtuWlB0140:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 16:27:08.84 ID:Znema7ww0134:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:18:19.04 ID:WuLtuWlB0彼女「お兄は大学に行ったら好きなように創作活動できると思ってたんだろうね…」
彼女「大学に入ったら、今度は親に官僚か弁護士に
なるように勉強しろとこっぴどく言われて…」
俺「弁護士…司法試験ですか…」奇しくも俺も法学部だったので反応した。
141:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:28:28.06 ID:WuLtuWlB0俺は何も言えずにいた。
というか、普段まったく自分のことを話さない彼女が、
こんなに話してくれているのに、半ば驚いた。
彼女「司法試験に落ち続けるうちに…お兄はまいっちゃったんだよね。
心を病んじゃって、今入院してるんだ…もう絵を描くどころじゃない。」
なんて言ったらいいか分からなかった。いや、なんて言えば良かったの?w
彼女はそんな重大なことをあっさり笑って言うもんだから、俺は動揺した。
153:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:44:34.59 ID:WuLtuWlB0俺「ダメだったんですか…」
俺「でも、まだまだチャンスはありますよ…!」
彼女は、そうだねとは言わなかった。
だた、笑うだけだった。
その笑いが、何を意味するのか、まだ俺には分からなかった。
155:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:50:58.67 ID:WuLtuWlB0色々合点がいった。
なんでゲーセンにいたかも。
最初の印象より、ずっとしっかりした子だった。
もちろん意味不明なところもたくさんあったけど、それが可愛かった。
美大浪人したらしく、俺より2つ3つ上だったんだけど、背は小さかった。
でもその背中がすごく大きく感じた。
俺は嬉しくなった。彼女が話してくれた。
これからはもっと彼女の力になれるかもしれない。
彼女のために、なんでもするくらいの心持ちだった。
彼女の抱えてたものは大きくてビックリしたけど、
何より話してくれたことが嬉しかった。
それから俺はまたしばらくゲーセンに通い続けた。ひたすら。
でもしばらく通っても、彼女はまったくゲーセンに現れなくなった。
メールは割と返ってきていた。
なんだろう?気になった。
土日も来ない。まだ仕事も始まっていないはずだった。
どうしてゲーセン来ないの?とメールで聞いても
「近いうちに行こうかな~」という趣旨のメールが返ってくるだけだった。
157:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:57:21.12 ID:WuLtuWlB0ゲーセンではいつも楽しくて、メシを食べることも多かったから、
向こうも俺のことを必要としていると思っていた。
突然、不思議なメールが来た。
「そろそろ、大きな勝負が待っています。勝ってみせるよ。」
160:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 16:58:59.19 ID:WuLtuWlB0「勝負?なにそれ?気になる」的なメールを返した。
するととんでもない内容のメールが返ってきた。
161:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:00:26.99 ID:hiNsX/wJ0162:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:01:08.33 ID:WuLtuWlB0卒倒しそうになった。
驚きと同時に怒りも湧いた。
すべてを話してくれたと思ったのに…どうして黙っていたんだろう。
165:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:02:17.99 ID:+t3I5efm0166:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:04:01.26 ID:WuLtuWlB0俺「どうしたの?すごく心配してたんですよ!!」
「若年性の卵巣がん。」
彼女はニコッと笑って俺が着くやいなやそう言い放った。
俺はことの重大さにすぐ気付いた。
俺はばあちゃんを卵巣がんで亡くしてる。
進行性のとても早い癌として知られていて、ばあちゃんもものの半年で…
だったのを思い出した。
168:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:05:54.20 ID:hiNsX/wJ0170:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:08:01.67 ID:WuLtuWlB0笑顔だけは変わらずそこにあったので、なんだか俺のほうが安心して、悲しくなって、
涙目になってしまった。
しっかりしなくてはいけない。
172:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:08:53.12 ID:0ZoZjK6b0179:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:15:00.81 ID:WuLtuWlB0俺「大丈夫です。教えくれてありがとう。
これからは、俺も一緒にいますから。」
これが俺の精一杯だった。
そうすると彼女は安心したのか、途端に涙目になった。
彼女「こわいんだよ…手術…絵を描けなくなるのも…
ゲーセンに行けなくなるのも…何もかも怖いんだよ…」
彼女は何かがぷつんと切れたかのように、大泣きしだした。
俺も涙をこらえて、ひたすら
「大丈夫、大丈夫…」としか言えなかった。
正直この時俺もダメだと思った。絶望してた。でも俺が
弱音吐いちゃ絶対だめなんだと思って、ふんばったよ。
186:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:19:44.46 ID:Hr3/t+Yc0189:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:20:41.67 ID:oRUw3uTe0188:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:20:09.67 ID:WuLtuWlB0すると、不思議と和やかになっていった。
そのうち、彼女のお母さんが機を見て病室に入ってきた。
俺「こんにちは」
母「あ、これはこれは…」
おふくろさんは人当たりの良い方だった。
191:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:24:01.35 ID:WuLtuWlB0しかし俺と彼女の関係性があまりに曖昧だったので、そこはなんとも言及しづらかった。
母さんは勝手に彼氏だと思っていたようだが。
そして俺は手術までの間通い続けた。
すべてを捨てる覚悟だった。
大学も全部サボった。
192:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:25:25.01 ID:hiNsX/wJ0
193:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:26:28.38 ID:oRUw3uTe0196:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:29:07.63 ID:WuLtuWlB0父親も、母親もいた。
お父さんは、話に聞いていたよりは温和そうな人だった。
「こんにちは…」
すると、母さんに手招きされて、待合に呼ばれた。
俺は母さんとは電話連絡もして買い出しにも行くくらい、実は懇意になっていた。
母「富澤くんには聞いておいて欲しいの。」
俺「はい…」
正直俺は手術の趣旨も、彼女の癌の状態もほぼほぼ知らなかったから、
何か聞きたいとは思っていた。
199:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:30:53.82 ID:hiNsX/wJ0201:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:32:30.17 ID:13xBj7C80203:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:32:56.33 ID:hiNsX/wJ0202:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:32:52.69 ID:WuLtuWlB0209:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:34:07.45 ID:oRUw3uTe0212:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:36:00.23 ID:RtZ4bQJy0218:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:44:40.89 ID:WuLtuWlB0お母さんは俺に言った。
母「手術しても…余命は1年くらいだろうって、言われてるの…」
動揺した。思っていたよりも、ずっとずっと、残っていた時間はなかった。
母「君は…それを覚悟しておいてね。それで、このことをあの子に伝えるか
わたしたちは悩んでるの…」
人生20年そこらしか生きて来なかった俺には、もうどうしたらいいのか分からなかった。
母「君は、最後まできっとあの子のそばにいてあげてね。
あの子、あなたがいない時もあなたのことばかり話すのよ」
みたいなことを言っていたと思う。
最後までってなんだ?もういなくなること確定なのか?
混乱した。
大学生の小僧には、あまりに色々重すぎて、どうしたらいいか分からなかった。
220:
名も無き被検体774号+:2012/01/15(日) 17:48:00.11 ID:hiNsX/wJ0221:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:48:01.73 ID:WuLtuWlB0俺はしばらくフワフワした気持ちになっていた。
全部夢なんじゃないかとも思っていた。
226:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:51:14.12 ID:WuLtuWlB0目覚めると俺を見て、フラフラと体を起こす。
俺「あ、起きないほうが…」
彼女「いいの、今日は調子いいんだ…」
笑みにも力がない。
俺「手術、頑張ったね。」
彼女「ありがとう。」
彼女の笑顔には本当に力がなくなっていた。
231:
1 ◆WiJOfOqXmc :2012/01/15(日) 17:54:25.81 ID:WuLtuWlB0俺「それは…もうちょっとしたらにしようか。」
彼女「ゲームしたいね。」
そんなこと言われたら、悲しくなるだけだった。
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