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変わる決心をした

2020年11月1日


234:
1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 22:32:16.92 ID:BzVorpZr0
オレンジに溶けるひまわりの中で、彼女はじっと俺を見つめていた
笑うことなく、あの綺麗な目で俺を見つめていた

何を待っているのか、俺は分かっていた
彼女の今までの行動も、彼女の俺に対する想いも全てを分かっていた
分かっていた上で、全て傷つけないように、壊れないように、見ないふりをしてきた

言うなら、今しかないぞ…この先ずっと…
そんな想いが俺の心のなかをぐるぐると回った

235: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 22:37:51.22 ID:BzVorpZr0
今も思い返す。
本当に、俺の人生を決める瞬間だった、あとさきずっと変えることのできない…

言え。言えば良かった。
言ったところで、こんなに離れているんだ、伝えたところで彼女を縛り付けてしまうだけ…
ならいっそ、このまま友達として永遠に…

そんなこと、関係ない。
言え、何故言わない。言うなら未来永劫今しかないぞ!

今だからなんとでも言える。
俺は、彼女と見つめ合ったまま、黙ってしまった。

236: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 22:45:10.71 ID:BzVorpZr0
目の前にいる彼女が、とても綺麗に映った
しばらく俺が黙って立ち尽くしていると、
彼女は不意にかぶっていた麦わら帽子をとり、そばに咲いていたひまわりにかけた

彼女「仕方ないんだよね」
俺「…なにが?」
彼女「わたしのせいなんだもん」

俺はドキっとした、何を言いたいのか、すぐに分かった

238: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 22:49:17.63 ID:BzVorpZr0
彼女「こっちはね、楽しいんだ。〇〇君も、気に入ったでしょ?」
俺「そうだね」
彼女「急にいなくなってごめんね」

彼女は、一年前のことに触れだした

彼女「こっちで見る空は高いし、向こうと同じように夜空は綺麗だけどさー」
彼女「それでも、足りないんだよねー」

俺は、ただ黙って彼女の顔を見て、
彼女の言うことに真剣に耳を傾けた

239: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 22:51:51.03 ID:BzVorpZr0
彼女「◯◯君がいないとさ」
彼女はうつむいて、恥ずかしそうに言った
夕焼けのせいなのか、日に焼けたのか、彼女の顔は赤くなっていた

そう言うと彼女は立ち上がって、もう一度深々と麦わら帽子をかぶり直し、
急いで駈け出した

ああ、俺はこれでいいのか。
俺も、彼女に伝えることがあるんじゃないのか。
一緒に来たこのひまわり畑で、ずっとずっと彼女に言いたかったことがあるんじゃないのか。

彼女「ほら、早くしないと暗くなっちゃうよー!」
といって笑って手を振った

240: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 22:57:07.73 ID:BzVorpZr0
夕焼けの中、走りだして行く彼女を見て、
もうこのまま一生捕まらないんじゃないか、と錯覚した
俺も急いで走りだして、彼女を追いかけた

アスファルトの山道を、濃い夕焼けのオレンジが照らす中
ただ黙って彼女と一緒に歩いた

さっきまでのことが嘘かのように。彼女はもうすっかり元通り

彼女「今日の夕飯は何にするって言ってたっけなー」
彼女「アイスでも買って帰るー?」 とか

俺は、これで、よかったんだろうか
まとわりつくような夕焼けのオレンジ色が妙にうっとおしく感じた

243: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:05:03.60 ID:BzVorpZr0
だんだん辺りも暗くなり始めて
麦わら帽子をかぶった彼女の少し後ろを黙って歩いた
彼女に語りかけるべき言葉が思い浮かばず、何も言えなかった

彼女は時々振り向いて、
「ここ段差あるから気をつけて」
「見て、◯◯が咲いてる」
とか笑って言うだけだった

244: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:12:04.31 ID:BzVorpZr0
家に着いた頃には、空は紫がかった夕焼けだった
家にはもう、俺達以外の人たちは帰っていて、夕飯の準備をしていた

母「おかえりー、もうすぐご飯なるよ」
彼女「遅くなってごめんー」

彼女は、母さんに「手伝う」と言っていたようだが、
「〇〇君と一緒にいなよ」と諭されたようだった

そして二人でご飯ができるまで縁側に座って他愛もない話をしていた

245: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:15:37.87 ID:BzVorpZr0
ご飯の時間も、みんなは笑って楽しく食べているが
俺だけ、どうしても腑に落ちなかった
何か、イガイガしたものが喉につまっているかのような

彼女の方をまともに見れずにいた
平静を装ったフリして、
言いようのない後悔と、やるせない気持ちでいっぱいだった

彼女と、俺 これからどうなってしまうのか
俺はここに住んでいるわけじゃない

246: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:19:36.01 ID:BzVorpZr0
夕飯のあと、俺が居間で茹でてもらったとうもろこしをかじっていると
台所の方から彼女の声がした

「あー、アイスないじゃんかー」
すると彼女の母さんが、
「あら、なかった?ごめんねー」
と言っていた

俺「俺が買ってきましょうか?」
「確かここに来るまでの道でコンビニがあった気が」

と言って買い物をかって出た

247: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:24:22.38 ID:BzVorpZr0
母「あら、いいの?」
彼女「それなら私も一緒に行くよー」

俺「いや、いいよ。すぐ戻ってくるからさ。家でゆっくりしてて」

そう言って、リリリリリ…と虫が鳴く外に出た
街灯があるとはいえ、辺りは真っ暗だった。

正直、何か一人になるタイミングが欲しかった
少し車を走らせて、気分転換をしようと考えた

248: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:28:56.83 ID:BzVorpZr0
俺は無心で、車を走らせた
来る時、彼女と合流した場所も越えて、
記憶を頼りにコンビニへと向かった

無事、コンビニには着いてテキトーにアイスを何個か買った
アイスが溶けないうちに…と急いで車を出す。
進む…きた道を戻るだけ…のはずだったが…

どこを曲がったのか分からない。
暗いせいもあって、昨日彼女と合流した曲がり角がどこだったか分からなくなってしまった

249: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:42:30.80 ID:BzVorpZr0
困ったな…と思いつつ
しばらく行ったり戻ったり、を繰り返していた
しかしどの小道に入ったか分からない…

そんな事をしていると彼女から着信があった
彼女「アイス買えたー?」
俺「買えたんだけど…迷っちまった」

彼女「はー?めんどくさいなぁ」
彼女「昨日落ち合った場所わかんないの?今からそこ行くから」
俺「いや、待って。こんな時間に一人で歩いたらあぶないぞ…」

と言った時には電話は切れていた。

250: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:46:26.09 ID:BzVorpZr0
俺はその後何回か彼女に電話したが
まったくつながる気配がなかったので諦めて行ったり来たりを繰り返した

10分ほどたってからだろうか、
道を走っていると、こちらを見て手を振る女の子が見えた

彼女「あー、良かった見つかって」
俺「ありがとう、でもこんな時間に一人で出てきたらあぶないだろー」
彼女「自分が迷ったくせにw」
俺「あー…ごめん」

彼女「それに大丈夫だよ。◯◯君があのまま帰ってこない方が嫌だもん」
と言ってシートベルトを巻きながら彼女は笑った

252: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:54:13.81 ID:BzVorpZr0
俺はそれを見て、彼女のことがたまらなく大切に思えた
心配して、わざわざ歩いて来てくれたんだろう…

でも、それを決して言葉にできなかった。

車を走らせて家に近づくと彼女が口を開いた
彼女「そこの川で車停めてよ」
俺「いいけど?」

彼女「もうアイスダメになっちゃったかなー」
俺「多分バーのやつはもうダメかな…カップのならいけるっしょ」
彼女「降りよ、せっかくだし橋の上で食べよ」
と言って車を降りだした

253: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 23:57:20.63 ID:BzVorpZr0
彼女はにこにこして「早く!」と俺を急かした
アイスの袋を持って彼女の元へ近づく

俺「ここ車置いても平気なの?」
彼女「大丈夫だよ、だーれも通らないからw」

橋の柵に腕を置いて、二人でアイスを食べ始めた
二人で「美味いね」「ん、そだね」とかつぶやきながら

彼女「ここって、運がいいと蛍が見えるんだよー」
俺「へー、いいねえ」
彼女「今年はもう、見えないかな。まあ私も見たことないけど」
俺「なんだよそれw」

254: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:00:05.31 ID:BzVorpZr0
あたりは本当に静かで、
水のかすかなせせらぎの音と、リリリリリ…と虫の鳴く声しかしなかった
車の排気音も、人々の喧騒も、何も無い。

街灯の灯りで、かろうじて視界がある。
そんな不思議な空間で、彼女はアイスを食べなから
何度もこちらを見ては俺と視線が合った。
そのたびに「フフ」って笑っては嬉しそうにする。

彼女に伝えろ。言いたい一言を、
言うべき言葉があるはずだろ?
そう思って、グッと拳を握っては、言えずにためらっていた

255: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:03:39.44 ID:H6QNyzDT0
「大好きだ」
そんな簡単な一言がどうして言えないのか
今だからそんな風に思えるが

この時、彼女を隣にした俺は、どんなに勇気を振り絞ってもそれを口にできなかった

前にも書いたけど、俺は色々と考えすぎていた
「好き」と伝えてしまえば
その一言が彼女を縛り付けてしまうんじゃないか

お互いこんなに遠く離れて、会うことすら難しいのに
それを伝えてしまえばお互い辛い想いしかしない

大好きだからこそ、黙っておかなければならないこともある
この時はそれで納得していたし、それが真実だと思っていた

そんなの、真実でもなんでもない、って知ったのが遅すぎたんだけどね

256: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:11:25.30 ID:H6QNyzDT0
考えぬいた俺から出た言葉は本当に情けないものだった

俺「今日かぶってた帽子さ」
彼女「…え?」
俺「変とか言ったけど…けっこう可愛かったよ」
彼女「あはは、ありがとうーw」

彼女は屈託のない笑顔で笑った
それを見るたびに、胸がしめつけられるように痛かった

257: 名も無き被検体774号+:2012/11/25(日) 00:15:32.02 ID:V754xmaiO
文章上手いな
読みやすいし

260: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:22:26.93 ID:H6QNyzDT0
橋で、二人でアイスを食べ終わったあとは
お互い何も喋らず、橋の上でしばらくぼーっとしていた
橋から下の川を見下ろすと
水の流れる音は聞こえるけど何も見えなくて
「落ちたら怖いね」とか言ってた

それを言うのも彼女で
俺は何も言えなくて彼女の顔を見たり
下を見たり、そんなことを繰り返していた

261: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:24:32.10 ID:H6QNyzDT0
そのあと彼女に
「帰ろっか」
って言って幸せな時間に自ら幕を下ろした

「暗いから気をつけて」と言って
彼女を車に誘導して
もうすぐそこなのに車で家と向かった
「アイスおいしかったー!」と言って彼女はご機嫌なようで
なんだか俺もほっこりとした気分になった

262: 名も無き被検体774号+:2012/11/25(日) 00:27:41.00 ID:lVZ99pzn0
せつないねぇ

263: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:28:13.23 ID:H6QNyzDT0
家について、真っ暗な庭がやけに怖く見えた
草むらから虫の声がするんだけどそれも寂しくて

この夜が明けたら明日はとうとうお別れになってしまう
もう覚悟もしていた
彼女に俺の気持ちを伝えなかったことを後々悔やんだとしても
これが俺の選択だったんだから仕方ない

264: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:31:08.26 ID:H6QNyzDT0
俺より先に玄関に向かった彼女はけだるそうにして
「今日は疲れたねーw」と言った
確かに色々あった一日
彼女は何を思っていたんだろう。

俺は溶けてしまったアイスを申し訳なく彼女のお母さんに渡して
縁側に座って煙草を吸う事にした

265: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:34:47.73 ID:H6QNyzDT0
その後、風呂に入ってさっぱりした後

縁側で彼女と二人でビールをあけた
暗がりの中に照らされる彼女の顔が今でも忘れられない
「これが最後かもしれない」
「もう二度と無い」
と思っていたから、忘れられないのも無理はない

「苦いー」と言ってしかめっ面して彼女は飲んでた

266: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:40:54.41 ID:H6QNyzDT0
その日の夜はなかなか眠れなかった
色んな思考が頭の中を巡ってしまって
その日あったことや話したこと、彼女の顔が頭から離れなかった

間違いなく彼女のこと「好き」だったのに
それを伝えられなくて、めっちゃもやもやとしてた
部屋の中もムシムシして
とても長い夜に思えた

267: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:47:33.75 ID:H6QNyzDT0
次の日起きると
俺以外のみんなは既に起きているようで
家の中は賑やかな生活音が響いていた

下に降りると、居間に彼女の姿はなく
お母さんに「〇〇なら外にいるよー」と言われた
外に出てみると、元気に水をまいている彼女の姿があった
「おはよー」と言って俺に水をかけようとしてくる
「やめろ、やめろw」と言いつつもそれが楽しかった

268: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:50:10.83 ID:H6QNyzDT0
朝ごはんを食べ終えると、俺は家族のみんなに
「短いあいだでしたが、大変お世話になりました」と挨拶をした
「また来てねーw」と笑ってくれた

それから帰宅の準備を進めた
来た時はあんなにワクワクしていたのに
帰る時はこんなにも物悲しい

そうこうしているウチに、彼女の姿が見当たらなくなっていた

269: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:53:40.30 ID:H6QNyzDT0
俺が「あれ…?」と言ってキョロキョロしていると
彼女のお母さんも「あの子ったらどこ行っちゃったのかしら」と困っていた

なんとなくその時の心境にぴったりな気がして
俺は逆に踏ん切りがついた
彼女がどこに行ったかは分からないし
お母さんには「彼女には俺から連絡入れときます」と行って

荷物を持って車に乗り込んだ
これなら後ろ髪をひかれることもないし、スムーズに帰れる…と思った

270: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 00:57:15.82 ID:H6QNyzDT0
俺は彼女に
「そろそろ帰るよー色々ありがとね」
とだけメールを打った

見るかどうか分からないけど、帰る前に一言連絡を入れておいた
俺は諦めの気持ちで車を発進させた
彼女のお母さんに何度も何度も会釈して、
家の庭を離れた。

271: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:05:16.00 ID:H6QNyzDT0
近くの川の橋にさしかかった所で、
橋の向こうに女の子が立っているのが見えた
「もしかして…」と思って車を徐行させて停まると、
それは案の定彼女だった

不覚にもとてもドキっとしてしまい、急いで窓を開けた

俺「何してるの?」
彼女「待ってたw」
俺「お前…またその帽子…w」
彼女はまた麦わら帽子をかぶっていた。
彼女「昨日似合ってたって言ってくれたからーw」
と言って笑っていた

272: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:11:45.05 ID:H6QNyzDT0
彼女「はいこれ、唐松草」
俺「え、なんて?」

彼女「昨日一緒に見た花だよー、集めるのけっこう大変だったんだから」
俺「え、ありがとう…」
彼女「向こう帰ってもそれ見てこっちのこと思い出してねw」

そう言ってニコニコして笑う
「やられたなぁ」と思った
帰り際にこんな事されて、あんな笑顔を見せられるとは思わなかった

274: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:13:43.94 ID:H6QNyzDT0
「ありがとう、本当に楽しかった」
それだけ言って、俺は窓を閉めた

彼女はずっと立ったままこちらを見ていた
土だらけになった手を、いつまでも振っていた

そこから数時間車を走らせたわけだが
助手席に横たわる唐松草を見るたびに
心がチクチクと痛くなって
生きた心地がしなかった

275: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:15:48.11 ID:H6QNyzDT0
俺は彼女と過ごした夏休みのあと、
またしばらく彼女には会えなかった

夏休みが終わって大学が始まる
特に変わったこともなく、平々凡々な毎日が再開したのだが
とある人との再会で、日常の交友関係に少々変化が生まれた

276: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:18:36.82 ID:H6QNyzDT0
車の免許をとる時に一緒だった後輩の子に大学で出会った
なんのことはない、学食で昼飯を食べていたら偶然出会って
「あれ…」とお互いなり「あーあの時の…」と言った具合だ

むしろ夏休みが過ぎるまで出会わなかったことの方がすごいかもしれない
そこから気軽に連絡先を交換して
たびたび連絡をとるようになった

「免許をとる」って何気ないことだけど
一生に一度しか無いことだから、その時の記憶って案外鮮明だったりする
そのためか分からないけど、お互い悪い感情はなかったんだと思う

278: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:29:48.37 ID:H6QNyzDT0
ここまでが前のスレに書いた内容です
ここからが新しく書いていくところです

半年越しになってしまいましたが、続きを書いていこうと思います。

279: 名も無き被検体774号+:2012/11/25(日) 01:31:44.77 ID:Q0bUHMANO
ここから結構続く?

283: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:35:54.06 ID:H6QNyzDT0
>>279
今日明日中に終わらすつもりです
前のスレでみんなにかなり迷惑かけてしまったし…

286: 名も無き被検体774号+:2012/11/25(日) 01:38:02.13 ID:Q0bUHMANO
>>283
そっか
ずっと続いてほしい気もするけど、早く結末を知りたい気持ちもある
いずれにせよ、戻ってきてくれてありがとう
最後まで見届けさせてくれ

282: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:35:04.80 ID:H6QNyzDT0
後輩と大学の学食で再開した時は流石にテンションが上がったが、
それ以降連絡が来ても特に何も思うことはなかった

夏休みが終わって大学が始まった頃の俺は
ほとんど人と関わらないように必要以上の外出はしておらず
彼女のことがとても尾を引いていて、まったく覇気がなかった

後輩との再開という本来おいしい展開にも
何も感じなかったし、どうでもよかった。

287: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:40:00.13 ID:H6QNyzDT0
気づけば俺は大学にもほとんど行っていなかった
クズ人間、ここに完成である

彼女と過ごした夏休みの数日間のことが何度何度も脳裏によぎって
その度に何も出来ない自分がいることに無力感を感じるだけ

でも親に迷惑をかけるわけも行かず、
必修の単位だけはとらなくちゃいけないなと思い
秋口にはポツポツと再び大学に顔を出すようになった。

288: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:43:55.42 ID:H6QNyzDT0
この間、俺が何度彼女に電話をかけようと思ったことか
電話帳で彼女の番号を開いて、数分固まる。
夜な夜なそんなことをするのが悲しい日課になってしまった
今思えば、かけろよ!とも思うのだが…

そんな中で久々に大学に行き、
夕方講義終わって小腹が空いていたので
購買でおにぎりなんかを買おうと思って
弁当コーナーをフラフラしていた

289: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:49:04.00 ID:H6QNyzDT0
俺がおにぎりを手にとって見てぼーっとしていると
「あっ!」というあどけない声が聞こえた
俺なんかしたか?と思って横を見ると、あの後輩が立っていた

後輩「久しぶり…です!」
俺「あ…お、おー」
はにかむって言うんだろうか苦笑いしてきまり悪そうに話しかけてきた

290: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:52:25.23 ID:H6QNyzDT0
後輩「授業終わったところ…なんですか?」
俺「そうそう。腹減っちゃってなんかねえかなぁと思ってw」
後輩「この時間お腹すきますよねーw」

と、とても自然に会話の流れになった
不思議と俺も構えずに会話ができていた。

後輩「もう今日は終わりなんですか?」
俺「終わりだよ。帰れるーw」

291: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 01:56:37.31 ID:H6QNyzDT0
後輩「私もなんですよーw電車ですよね?」
俺「うん、駅に向かうよー」
後輩「あ、じゃあ一緒に行きましょうよw」

ポンポンと話が進んでいく。
正直あんまり話したこともないのにマジか…って思ったけど
女の子だし一緒に帰れるならそれもアリか~とも思えた

292: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 02:00:13.66 ID:H6QNyzDT0
さすがに一緒に歩きながらおにぎり食うのはまずいよな…
と思って購買の前でササッと食べて、そのまま二人で大学を出た

歩いていると、後輩が意味もなく笑い出した
後輩「ウケますよね…w」
俺「何が…?w」
後輩「え、だって免許とる時に一緒になって、大学も一緒なんてw」
俺「あー…」
後輩「けっこう凄いですよね?」

293: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 02:06:40.87 ID:H6QNyzDT0
まあ確かに大学で再会するなんて、あまりない偶然だよなとは思った

しばらく教習所の話題で盛り上がった
「あの教官はうざかったよね」とか「テストは緊張した」とか
非常に他愛もないものだったけど、
俺が最初に不安だった気まずさは全然なかった

すごい賑やかな子で仕切りに話しかけてくる
学年はいっこしか違わないけど、俺は浪人してるから実質2つ下。
元気に見えるのもそのせいだったのかもしれない

295: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 02:14:33.89 ID:H6QNyzDT0
騒がしいのは教習の時から変わってないなーwとか思ってると気づいた

俺「ってか、なんで敬語?w敬語だったっけ?w」
後輩「あ、いやー…だって大学の先輩じゃないですか…」
律儀な子だなぁと思ったけど敬語はなんか鬱陶しかった

俺「いやいいよwタメ口でさ。学年も一個しか変わらないし」
後輩「あ、でもー…」
俺「お願い」
後輩「え、うん…」

296: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 02:19:40.77 ID:H6QNyzDT0
タメ口で話して、と言った途端急に無口になって
あまり話さなくなる後輩
なんだか面白い子だなwって頭の中で思ってると不意を突かれた

後輩「そういえば…好きな人には会いに行ったの?w」
ってニヤニヤしながら聞かれた
くそ…覚えてやがった…

俺「あー…会いには行ったけどね…」
後輩「え、あれ本当だったんだ!wすごっ!」

298: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 02:24:43.21 ID:H6QNyzDT0
俺「嘘ついてどーすんのw」
後輩「で、で?どんな感じだったの?超気になるw」
俺「いや、それはさ…」
元気な後輩が畳み掛けてくる。

後輩「遠距離なの?えーすごーいw」
俺「いや、そういうんじゃなくてさ…」
後輩「え、じゃあなんなのーw」
無邪気な追撃が俺に迫る

299: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 02:32:12.16 ID:H6QNyzDT0
俺「なんというか…」
後輩「あ、フラレちゃったんだー?w」

俺はこの一言で火がついてしまった。

俺「そんなんじゃないって言ってんだろ?」
後輩「あ、ごめん…」
静かな口調ではあったが俺があまりに表情を変えたからか
後輩は驚いてしまった

無邪気な一言、悪気はない
分かっていても、俺が日々悩んでいることに土足で踏み入れられた気がして
俺は大人げないことをしてしまった

300: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 02:37:38.85 ID:H6QNyzDT0
駅に着いても、俺らが口を開くことはなかった
後輩は明らかにションボリした様子で、
俺もなんて言ったらいいか分からなかった
何も知らない子に酷なことしちまったって既に後悔してたけど

そして最悪なことに、乗る電車も一緒のものであった
電車に乗っても何も話さない。
俺が先に降りるので、「じゃ、また…」と言うと
後輩は少し笑って会釈だけした

301: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 02:46:11.51 ID:H6QNyzDT0
こっからまた自己嫌悪した
家に帰ってからも「なんであんな態度とったんだ」とずっと思い出してばかり
と同時にやっぱり彼女のことも思い出して
もうなんか何もやる気が起きなくなってその日はそのまま寝てしまった

朝になると後輩からメールが来ていて、
「今日は本当にごめんなさい。何も考えず変なこと言っちゃって…」
といった内容のメールだった

昨日のメールだヤバイ、と思った俺は
「こちらこそあんな事でむきになってごめんね」
という感じのメールをすぐに返信した

303: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 03:04:29.26 ID:H6QNyzDT0
俺はその日、学校休んでバイトだけ行った
夕方くらいになると後輩から返事があって

「返信あってよかった。ところで明日は大学いつ終わりですか?」
という感じのメールが来ていた。
俺が、何時くらいに終わるよ、という旨のメールを返すとその日の返信はなかった

正直俺は次の日も大学に行く気はなかったのだが
後輩からメールもあったし、たまには真面目に大学行くかって思った。

304: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 03:08:59.29 ID:H6QNyzDT0
翌日、俺は授業が終わると「昨日のメールはなんだったんだ」
って思いながらフラフラ購買へ向かった。
すると入り口で待ち伏せていたかのように後輩が立っていた
純粋にビックリした、なんでいるんだって。

後輩「あの…この前はごめんなさい…」
俺「あ、いやもう本当に…こっちこそなんかごめんね…」

本当に申し訳なさそうに、困って俺の前で俯いていた

305: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 03:17:06.44 ID:H6QNyzDT0
わざわざ時間を合わせてまで、謝りに来てくれるなんて思ってもいなかった。
俺「後輩は、講義いつまで…?」
後輩「あ、私…次もある…」

俺「じゃあ俺待ってるからさ、終わったらここにおいでよw」
後輩「え、いいの…?」
俺「うん、大丈夫。」

固まっていた後輩の表情が笑顔に変わってくれた

306: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 03:20:39.85 ID:H6QNyzDT0
後輩「私が勝手なことしただけなのにわざわざ…」
俺「いいからいいからw早くしないと遅刻しちゃうよw」
後輩「あ、じゃあ行ってくる…」
後輩は笑って俺に手を振って走っていった。

自分でもよく分からなかったけど、俺は後輩を待つことにした
どうしてそんなことを言ったんだろう
多分後輩の誠意に触れて、少し後輩のことが知りたくなったんだと思う

307: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 03:28:33.46 ID:H6QNyzDT0
俺はその後、大学の近くのコンビニに行って
煙草を吸ったり漫画を立ち読みしたりして時間を潰した
誰かを待つなんて普段ほとんどしない。
時間を潰した先に誰かがいてくれるってことにウキウキした

この時から俺の気持ちは少しだけ後輩に傾いていったんだと思う
はたから見れば可愛らしくて元気な後輩だ
心動かない方がおかしいのだけど

308: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 03:30:22.95 ID:H6QNyzDT0
さて、今日はこの辺で落ちようと思います。
明日(今日)の午後くらいから続きを書いていこうと思います

見てくれていた人ありがとう
では、また

309: 名も無き被検体774号+:2012/11/25(日) 03:33:10.25 ID:04OhCwJQ0

ずっと前から待ってたんだぞー
戻ってきてくれて嬉しいわ

310: 名も無き被検体774号+:2012/11/25(日) 03:42:49.21 ID:KjuHDtG80
おつおつ
明日完結するんだろうか
実に足掛け半年のスレw
空白期間に何があったかも気になるな

318: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 16:26:23.64 ID:H6QNyzDT0
さて、今日も続きを書いていこうと思います
良ければお付き合いください

319: 名も無き被検体774号+:2012/11/25(日) 16:28:37.07 ID:Q0bUHMANO
おー、待ってました!

320: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 16:39:07.85 ID:H6QNyzDT0
時間はあっという間に過ぎて
コンビニでダラダラしてる内に後輩の講義の終わりの時間が近づいた
俺は早歩きで購買へと向かった

ぼーっと突っ立っていると終業のチャイムが鳴って
人の群れが流れてきた
やべえ、けっこう人多いな…後輩見つかるかなって少しそわそわした

321: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 16:51:03.91 ID:H6QNyzDT0
すると遠くで友達と歩いている後輩を見つけた
途中で手を振って友達と別れたようで
そのまま一人になって購買に向かってきた

わざわざ友達と離れて来たのか…と思うと少し悪いことしたなって思った
こっちへ歩いてくる後輩に向かって俺は小さく手を挙げた
すると後輩も笑って手を振ってくれた

後輩「ごめん遅くなって…」
俺「いやぁ、フラフラしてたし全然w」

322: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 17:02:26.33 ID:H6QNyzDT0
俺「どうする?学食でご飯でも食べてく?」
後輩「あ、うん…」

正直気まずかった。
もう悪い感情はなくなっていたけど、この前の気楽さがなかった

学食に行って一緒に夕飯?を食べたのだけど
食べている最中も特に会話もなし
後輩はまだこの前のことを気にしてるのか
俺も何を喋っていいか分からずで、よくわからない雰囲気になっていた

323: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 17:11:41.43 ID:H6QNyzDT0
帰る頃にはすっかり暗くなっていた。
帰り道で「今日は本当に待たせちゃってごめん…」
と言いながら付いてくる後輩を見て
俺はたまらなくなってちゃんと話す決意をした

俺「あのさ…俺、好きな人には会いに行ったんだ」
俺が話始めると後輩は優しく笑って俺の方を見た

俺「でも…」
その日俺は後輩に全てを話した

324: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 17:20:33.98 ID:H6QNyzDT0
今まで、誰にも言えなかったこと
誰に言うべきことでもなかったこと

ずっと想い続けていた幼馴染がいて、近くに住んでいたこと
今はその「坂の上」」はもうないこと 彼女は遠くに引っ越したこと
そして気持ちを伝えられなかったこと
遠距離恋愛に踏み出す勇気がまったくないこと

気づけば俺たちは自販機のある駐車場に端に座り込んで話していた
黙って頷いて話を聞いてくれた後輩

325: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 17:27:50.94 ID:H6QNyzDT0
今まで誰に言うこともなく、ずっと胸に秘めていたこと
それを初めて誰かに話した

俺「いきなりこんな事話しちゃってごめん…」
後輩「ううん、話してくれてありがとう。」
後輩「なんというか…応援するよ」
俺「ありがとう。」

そう言うと後輩はクスっと笑って、
「辛くなったらいつでも話して、聞くよ」と小さく言った

326: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 17:36:46.23 ID:H6QNyzDT0
後輩は立ち上がると、
ガラガラの駐車場の中を駆けて出ていった

俺「あ、待ってよw」
後輩は振り向いて楽しそうに笑ってみせた
後輩「でもなんだか、素敵だね。」
「絶対さ、その恋は叶えたいよね」

まっすぐな目で俺を見て言うんだ
俺「でもな…」
後輩「でもじゃないよ、絶対でしょ?」

327: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 17:41:11.37 ID:H6QNyzDT0
そう言ってまた後輩は駅の方向へ向かって走りだした

俺「ちょ、なんでw待ってよw」
後輩「みなさーん、ここに一途な恋をしてる人がいまーすw」
俺「おいw茶化すなよw」

そうこう言ってる内に俺は後輩に追いついて、「まったくw」と言って息をついた
すると後輩が「ごめんw」と言って笑ったので
俺も「いいよw」と言って二人して声を出して笑ってしまった

328: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 17:46:03.50 ID:H6QNyzDT0
そのあと駅についてからは非常に和やかなムードだった
俺も言いたいことを全部言えてとてもすっきりしたし
こっちが話したことで後輩もより心を開いてくれたのだろうか

後輩と別れて電車から降りると、その日はとても星が綺麗な日だった
アホみたいに空を見上げて歩きながら
「よっしゃもうちょっと前向きに生きてみるか」って思えた
それもこれも後輩のおかげだった
あの子が現れて、話すことができたおかげで、気持ちの整理ができたんだ

329: 名も無き被検体774号+:2012/11/25(日) 18:30:12.51 ID:KjuHDtG80
来てたか!
後輩可愛いなw

334: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 23:19:51.38 ID:H6QNyzDT0
今まで、誰にもいえずにウジウジしていた俺の気持ち
それを話せる理解者が現れたことで、
俺の気持ちは急速に後輩に寄っていった

でも俺の「好き」という気持ちは幼馴染の彼女から動いていなかった
後輩への好意は恋心のそれではなかった

季節が過ぎて寒さが増してくると
後輩からの連絡も増えていった

336: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 23:25:43.63 ID:H6QNyzDT0
俺は後輩に頻繁に話を聞いてもらうようになった
時間を合わせて大学で会ったり
一緒に帰ることをよくするようになった

俺は自分がずっと昔から抱えてきた悩みを聞いてもらえるという認識だったけど
後輩は自分のことや自分の恋愛については語ろうとせず
いつも笑って茶々を入れたり話を聞いているだけだった

俺は話を聞いてくれる本当に良い友人を持ったと思っていた

338: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/25(日) 23:57:56.80 ID:H6QNyzDT0
クリスマスも近づいた12月になると
ますます後輩からの連絡が頻繁になって
ほとんど毎日のようにメールをしてくるし
学校でもコンタクトをとってくるようになった

後輩が一緒にいてくれるのは嬉しいけど
俺はこの間も彼女に電話してみたりメールしてみたり
気持ちはまだまだ彼女にあった

339: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:06:19.94 ID:kZ2STLmO0
さすがの俺でもこれには感づいた
後輩はもしかして…と

でも俺はたった一人で抱えていた悩みを話せる理解者を失いたくなかったし
その現実をあまり考えようとしなかった
本当に自分勝手な奴だよ、俺は

いつもニコニコして話しかけてくる後輩を見ていると
やっぱり楽しくて、そんなことはどうでもいいかって思ってしまうんだ

340: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:11:18.50 ID:kZ2STLmO0
クリスマスが一週間後くらいに迫ったある日、
後輩から誘いを受けた
「クリスマスどこかに行こうよ!」

それは間違いなくデートを意味するものだった
ずーっと一人か男だけで過ごしてきたクリスマスに、女の子からのお誘い
こんなに嬉しいことがあるだろうか?

でも俺はその誘いをどうするか、死ぬほど真剣に悩んだ

342: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:16:53.98 ID:kZ2STLmO0
ここで、行くのか行かないのか。
俺にとってそれは
遠く離れた所にいる彼女を追い続けるか
近くにいて楽しく話せる後輩を選ぶか、というくらい重要なものだった

すごくすごく悩んだ
悩んだ結果、俺は見栄をとった
大学の男友達、家にいる家族
クリスマスに女の子と一緒にいられるという事実をとった

それは後輩の想いを無下に扱うようなものだと思う
本当にクズな奴だよ俺

343: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:20:46.25 ID:kZ2STLmO0
クリスマスの日、俺は人生で初めて女の子と過ごすことになった
その相手は彼女ではなく、後輩だったワケなんだが。

二人で一緒に映画でも見てご飯を食べようかって感じだった
お昼ごろ待ち合わせ場所に着くと、深緑のマフラーを巻いた後輩がいた
俺を見つけると、
「こっちこっちーw」
って言って楽しそうに手を振った

それを見て俺は可愛いと思ったし
なんだか幸せだなぁってウキウキもした

344: 名も無き被検体774号+:2012/11/26(月) 00:22:11.12 ID:8BmrVkHfO
今が3回生ってことは去年の出来事か
話に関係ないかもだけど、1は身長どれくらい?

346: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:23:35.57 ID:kZ2STLmO0
>>344
今3年です。
170ないくらいですかね?w

347: 名も無き被検体774号+:2012/11/26(月) 00:25:37.15 ID:8BmrVkHfO
>>346サンキュー
なんか勝手に背が高い人をイメージしてた
続けてくれ

345: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:22:54.62 ID:kZ2STLmO0
二人で並んで一緒に映画館に歩いて行って、
二人で並んで映画を見て。
はたから見れば完全にカップルだったろう

事実後輩と話しているときはいつも笑いが絶えなかったし
俺もこの子と一緒になれたら本当に楽しいんだろうってつくづく感じてた

348: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:29:12.10 ID:kZ2STLmO0
そのあとは二人で少し小洒落た小さなレストランに行った
周りは当然家族連れORカップルばかりw
実はこの店、後輩が予約を入れていたらしい。
脳天気そうに見えて、意外とできる子だ

店をで出て帰る頃にはあたりはすっかり真っ暗になっていた
二人で「おいしかったねー」「楽しかったー」と
微笑ましく語りながら車を停めてある駐車場に向かって歩き出した

349: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:33:17.63 ID:kZ2STLmO0
車に乗って走りだすと、しんみりした表情になって後輩が
「なんか夜景とか見えるとこ行きたくない?」
と言った。

せっかくのクリスマスなんだし、そういうのもいいかなと思った俺は
夜景が見える場所…と自分の脳に相談した

ある。いくつか、ある
俺の家の方、坂の上の、もっと先…
母校の中学があるあたりは、下の町を見下ろせるな…と思った

350: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:37:45.91 ID:kZ2STLmO0
隣の助手席を見ると、夜の光に映えた後輩が座っている。
正直、助手席に座った女の子って卑怯じゃないか?それも夜。
それは可愛いと思ってしまうだろう…

そう思いながらも、その助手席に彼女が座ったあの日のことがどうしても思い出されて
自分でもなんて言ったらいいか分からないくらい複雑な気持ちになった

351: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:43:04.20 ID:kZ2STLmO0
しばらく車を走らせ続けて、
俺の家の近くを通り過ぎた。
そして坂をのぼっていって、坂の上の横も通り過ぎた
今は閉まってしまった、昔彼女の住んでいた坂の上。

もちろん、後輩にはそんな事は言わない
でも通り過ぎる瞬間、少しだけ胸が疼いた

どんどん道をのぼっていく
母校の中学近辺の舗装されていない駐車場に着き、車を停めた

352: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:46:51.04 ID:kZ2STLmO0
言うほどの絶景ではない
でもそれなりに高さがあるので、下界の街の灯りがぽつんぽつんと見えて
なかなか綺麗に見える、我ながらの穴場スポットだ。

後輩「うわーこんな所があるんだ…!」
俺「綺麗だよね。静かだしいいよねーw」

中学の頃はたまにここに来てたりもした。

353: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:49:59.27 ID:kZ2STLmO0
古ぼけた柵に寄りかかって、二人でしばらく黙って夜景に見とれていた
俺が気を遣って離れた所で煙草を吸おうとすると、
後輩「いいよ!ここで吸ってw一緒に見ようよ。」
と言ったので
俺はその場で「あ、ごめ…」と情けない声を出して
一服をしていた

そんな風にしていると後輩が遂に口を開いた

354: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:52:28.19 ID:kZ2STLmO0
後輩「あのさぁ…」
俺「ん?」
後輩「俺さんは、彼女さんのことずっと好き…だよね?」
俺「うん、まあ……」

来たか。来てしまったか。

後輩「すごく離れてるのに、それでも想い続けるってすごい。」
俺「そんなことないwただ、諦めきれない俺がいるだけで…」

355: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/26(月) 00:56:42.02 ID:kZ2STLmO0
俺「俺だって、正直どうしたらいいか不安だよ。」
後輩「すごく一途なんだよね、本当に…」
俺「いや、そんなことは…」

すると、後輩が鼻をすすって泣き始めた
後輩「いいなぁ…彼女さん、俺さんにそこまで想われて…」
俺「あ…」、
後輩「私も俺さんのことが好きなんだよ…でも、そんなことずっと言えなかった…」
俺「…」

356: 名も無き被検体774号+:2012/11/26(月) 00:58:00.57 ID:a/BefmC80
きたか…!

 

名作, 感動

Posted by wpmaster