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変わる決心をした

2020年11月1日


110:
1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 03:48:36.89 ID:BfOH7Lf/0
免許をとると休みは終わり
学年が一つ上がった
段々暖かくなってきて、季節の変わり目と言ったところ

授業は目一杯つめこまれており
いつ彼女に会いにいくか途方に暮れた
夏休みしかないな、ってこのあたりで感づいた

111: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 03:53:17.85 ID:BfOH7Lf/0
忙しさからなのか
俺のことを忘れたのか
この頃から彼女とはあまりメールできなくなっていた

もう半分諦めてたもんな、連絡つけばラッキー、くらいに
5月の頭くらいに、彼女に
「8月に休みとってほしい。できるだけ長く。」
とメールを打った

112: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 03:56:37.55 ID:BfOH7Lf/0
案の定メールはしばらくなかった
一週間くらいしてから
「分かったよ。」とだけ返事があった

離れてしまってから、お互い連絡を本当に控えていた
俺は、離れてしまったら絶対結ばれることはないし
彼女の変な足かせにならないように、と連絡を遠慮していた
彼女もそうだったんだろうか

距離が、お互いに気を使わせる原因だったのかな

114: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 04:03:14.63 ID:BfOH7Lf/0
俺はそれから
無心で過ごしていた
彼女のことを考えないようにして
浮かないように上手いこと周りにも合わせつつ

日々をやり過ごした
あまり面白くはなかった
友人は好きだったけど
楽しくはなかった

116: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 04:05:17.86 ID:BfOH7Lf/0
段々暑くなってきて
夏休みも目前に迫ってきた頃
彼女から一通のメールが来た

「8月、来るの?」
俺は、「行くよ。たくさん話そう。」と返した

すると、「風鈴買っとくね」
という意味不明なメールがあって、メールはそこで切れた

117: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 04:07:50.31 ID:BfOH7Lf/0
必要以上の連絡のやりとりを全くしなかった俺達
それが良い事か悪いことかもよく分からなかったけど

8月になって、とうとう彼女の家に向かう日となった
運転にはだいぶ慣れていたが
初の長距離運転に、不安を感じずにいられなかった

118: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 04:09:46.15 ID:BfOH7Lf/0
田舎から田舎に移動するという、
あまり変わり映えのしない旅ではあったが
途中一人でSAによって煙草をふかしたり
写真を撮ったりして
一人で長距離運転で旅するのは悪くなかった

すっかり夏で、少しノスタルジーな音楽をかけながら
冷房をきかせて高速をひたすらに走るのは、
とても気持ちがいいものだった

119: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 04:12:26.41 ID:BfOH7Lf/0
夕方になった頃、高速を下りて下道になると
それなりの田舎が広がっていた
というか、山だった。山のふもと?
本当に何もない、山間部にぽつりと集落があるような…

近くまで行くと彼女に電話した
しばらくすすんだ道の脇に彼女が立っていた
日が傾いたとは言え、炎天下の中で、
汗ばんで笑って手を振っていた

120: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 04:14:42.73 ID:BfOH7Lf/0
ドキッとした
一瞬で彼女だと分かった
会いたくて仕方なかった人だ。

白いブラウスに麦わら帽子という
なんとも妙ちくりんな恰好で、雰囲気も何もなかったが
楽しそうに手を振って呼び寄せるものだから
すごく胸がときめいてしまった

121: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 04:18:05.27 ID:BfOH7Lf/0
信じられないくらい嬉しくて
ワクワクしてる自分がいることにすぐ気付いた

窓越しに近づいてきた彼女は
彼女「こっちこっち!この細い道曲がってまだ奥がウチだから!」
俺「そっか、とりあえず乗りなよ」
ひとまず彼女を車に乗せた

俺「なーんでそんな恰好なんだよw」
彼女「だって熱いからさー、母さんがかぶってけって言うんだもん」

122: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 04:22:58.50 ID:BfOH7Lf/0
ごめんなさい
今日は一旦このへんで落ちようと思います
また今日の夜に続きを書きます
読んでくれてた人申し訳ない。

123: 名も無き被検体774号+:2012/11/23(金) 04:26:40.69 ID:q4l5wLD40
おつおつ
また明日なー楽しみにしてる

137: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 21:49:57.66 ID:xOEaU8jL0
こんばんは
見てくれた人ありがとう
再開したいと思います

138: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 21:51:59.70 ID:xOEaU8jL0
脇の細い道に入ると
しばらく上り道のようなものが続いた
ぎりっぎりで車2台がすれ違えるかどうか、くらいの広さの道
両端は草だらけ
場所によっては川で、落ちそうでヒヤヒヤした

とても冷房のきいた車内
彼女「冷房さっむいー」
俺「切ろっか、窓開けよう」

139: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 21:54:06.14 ID:xOEaU8jL0
窓を開けると、熱気が一気に押し押せた
俺「うわ、あっち…」
彼女「そうかなー?これくらいがいいよ」

笑って話す横顔を見て、ここまで来て良かったって思った
再び細い道を曲がって、
下って、小さな川にかかる橋を渡った。

彼女「この橋渡ればもうすぐだよ。」
俺「けっこう来たな…よくあそこまで歩いたね。」
彼女「まあね」

140: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 21:56:22.46 ID:xOEaU8jL0
橋を渡って、道なりに進んだ
彼女「ここ!この家!」
俺「おお、ここなら車が入れやすい」

道の角に、庭が面している家で昔ながらの素朴な家だった
庭には草や花が生えている
そして勿論大量の虫もぶんぶん飛び回っていた

俺「虫飛んでる…おりたくねー…」
彼女「はー?w」

141: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 21:58:57.82 ID:xOEaU8jL0
でも、広くてとても綺麗な庭だった
エンジンを切る、車を降りるとけたたましい蝉の声
この瞬間肩の荷がおりて楽になったが、すごく遠くに来たように感じた
もう夕方で、日は沈みそうだった

俺「おー、いい空気だ。遠かったー」
彼女「あー…お疲れ。早く休みなよ」

142: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:02:39.02 ID:xOEaU8jL0
玄関に向かうと、外の水道場みたいなとこに人がいた
彼女のお婆ちゃんだ。

俺「あ…こんにちは」
お婆ちゃん「おやおや、これが言ってたお客さんかい?」
彼女「そうだよー」
初対面だけど、優しそうな人だとすぐ分かった

お婆ちゃん「今、茄子洗ってるからね。あとで食べてね」
とニコニコして話してくれた

143: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:06:23.29 ID:xOEaU8jL0
玄関に入ると、勢い良く彼女の母さんが迎えてくれた
母「〇〇君、久しぶりー。遠かったでしょー」
俺「いえいえ、楽しかったですよ」

とても久しぶりに見た気がする、けど小さい頃から気心知っている人なので
こうして元気に暮らしていることを実感できてとても安心した

母「夕飯まではもう少し時間かかるから、ゆっくししててね」
と言われたので、ひとまず空いている部屋に荷物を放り投げ
一階で冷たい飲み物をいただくことにした

145: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:10:00.96 ID:xOEaU8jL0
彼女が、
「カルピスしかねーw」って笑いながら持ってきた
そう、俺は小さい頃はあまりカルピスが好きじゃなかった

俺「いや、今はわりと好きだから大丈夫w」
彼女「そうなの?ならよかったw」
居間の隣の縁側の窓が開いていたので
そこに座ることにした

146: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:13:35.85 ID:xOEaU8jL0
俺「割と風通しよくていいね」
彼女「窓あけとけば割とねー。虫は寄ってくるけどw」

チリンチリン、と音が鳴った
上を見ると青い風鈴が風に揺られて鳴っていた
ああ、これがメールで言ってた…と思ったけど
俺はあえて触れないで、黙っていることにした

雰囲気とかもあったけど、単純に疲れててあんまり言葉が出なかった…んだと思う

147: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:19:48.27 ID:xOEaU8jL0
特に話すことも無くて、どんどん赤く染まる空を眺めてた
外からお婆ちゃんがじゃぶじゃぶと茄子を洗う音と、蝉が鳴く音が聞こえて
時たま風鈴の高い音が響いた
信じられないくらい夏、って感じ
俺もそこにいて、少し感動してしまうくらい、日本の夏だった

ぼーっとして、本当に時間がゆっくり流れてるんじゃないかと思うくらい

148: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:24:46.81 ID:xOEaU8jL0
いい雰囲気だなーとしみじみ思いつつも
やはりあまり無言もよろしくない、と思った俺は
無理にでも口を開こうと思った
庭を見渡して、沢山の花が咲いていたので

俺「沢山花があるよね。一杯生えてるあのピンク色のは…」
彼女「ああ、さるすべりかな?素朴で綺麗だよねー」
俺「まあどこにでも生えてそうでいいね…」
彼女「何それー」

149: 名も無き被検体774号+:2012/11/23(金) 22:27:03.01 ID:ckXJL3YJ0
綺麗な文章だな
夏の情景が浮かぶ

150: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:28:21.14 ID:xOEaU8jL0
俺「もっとこうさ、ばーっとひまわりが生えてるようなとこはないの?」
彼女「あるよ、少し歩くけどね」
俺「あるんだー、向こうにはひまわりってあんまり生えてなかったもんな」
彼女「うん」

この時、向こうの話になってしまってハッとした。
それから、またしばらく無言
喋らず、夏の音が頭に響いた
やっちまったかな、って思った

151: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:32:52.62 ID:xOEaU8jL0
日が沈んで暗くなり始める頃
彼女のお爺ちゃんが畑から帰ってきた

みんなで居間で畳に座って食卓を囲った
その日の夕飯は夏野菜のカレーだった
オクラが並んでて、ビックリした

彼女「〇〇君オクラ好きだったよねーw」
俺「いや、これマジ納豆の次に最強っしょ」
と笑いながらご飯を食べた

オクラが好物なんていいね、と爺ちゃんと婆ちゃんに笑われた

152: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:39:01.90 ID:xOEaU8jL0
ご飯を食べ終わると、
有無を言わさずテーブルにスイカが出てきた
塩をかけるかかけないかで揉めたw

スイカまで頂いてこのままはいけんな、と思い
俺は台所に行って食器洗いを志願した
彼女と二人で食器をいそいそと洗った
慣れないことなので彼女に
「へったw」
と小言を言われながらも黙々とこなした

153: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:43:56.48 ID:xOEaU8jL0
食器洗いを洗い終えると、
みんなで居間でテレビを見ながらマターリしてた
煙草吸うんじゃない?って言われて
彼女のお母さんがガラスのでっかい灰皿を持ってきた

俺「いやいや、ここで吸うのは…」
と言って俺はそそくさと縁側に移動した

154: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:49:00.57 ID:xOEaU8jL0
縁側に腰掛けて
一人で煙草を吸っていると
黙って彼女が隣に座った

ハっとして振り向いたもんだから、笑われた

俺「臭いぞ?」
彼女「◯◯君いっつも臭いもんー」
俺「はー?w」
彼女「うそうそw」

156: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 22:59:45.40 ID:xOEaU8jL0
煙草を吸ってリラックスしていたので話やすかった

俺「で、どーなのよ?」
彼女「何が?」
俺「こっちは。元気でやってるの?」
彼女「うん。いいところだし、仕事も楽しいよ」

俺「そっか。寂しくはないの?」

157: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:04:12.40 ID:xOEaU8jL0
彼女「その質問卑怯だねーw
寂しくないワケないじゃん…」
俺「ごめん…」

風鈴の高い音に混じって、ジーっとかリリリリ…と虫の鳴く声が聴こえた
普通に考えれば、今は隣にいるけどまたすぐ離れ離れ
俺もなんだか落ち込んでしまった

159: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:10:25.39 ID:xOEaU8jL0
彼女「お酒飲む?」
俺「いや、いいかな」

酒を飲むには最高の場だったけど、純粋に味わっていたかった
煙草にカルピス、くらいがちょうど良かった。

俺「明日さ、出かけよう」
彼女「え、そりゃそうでしょ」
俺「ひまわりあるんでしょ?見に行きたい」
彼女「いいよー。まあそれだけじゃないし、色々見て回ろっか。」

160: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:16:10.68 ID:xOEaU8jL0
それから、あまり言葉を交わすこともなく
部屋に入って一緒にパソコン見たりして遊んだ

風呂に入って、自分の部屋に戻って、一段落
長い一日だった
車で大移動して、彼女に会って
ずっとここにいたいな、と思った

162: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:27:04.53 ID:xOEaU8jL0
窓を開けて、持っていたペットボトルを灰皿にして、一服。
目の前をひゅんひゅん虫が飛んでいた

空を見ると、思った以上に星が見えた
何故か知らんけど、この時俺泣きそうだった
喉のあたりがなんか詰まって熱くて、
「あ、俺泣きそうなんだな」って悟った

163: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:29:48.51 ID:xOEaU8jL0
次の日の朝なんだか俺は早起きしてしまった
下に降りると、彼女の母さんが朝ごはんの支度をしていて
「あら、早いねー。〇〇まだ寝てるから、起こしてきたら?」
と言われた
居間ではお爺ちゃんとお婆ちゃんがテレビを見ていた

俺も一緒にテレビを見ていると、彼女が下りてきた
彼女「朝ごはんまだだよねー?」
母「まだー」
というやりとりを交わした

164: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:34:58.28 ID:xOEaU8jL0
すると彼女は俺に向かって手招きをした
一瞬なんのことだか分からずぽけっとしていたら
「来て!」と声に出して言われた

玄関から外に出た
彼女「一緒にやってもらおうと思って」
俺「何を?」
彼女「花の水やりだよ」

165: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:44:13.20 ID:xOEaU8jL0
俺「ああー、でもこの時間はまだ涼しくていいね。」
彼女「でしょ?この時間外に出ると気持ちいいんだよ」

そう言いながら彼女は水道からホースを引っ張ってきた
俺「朝顔なんてあるんだ」
彼女「ま、一応ね。そっちにじょうろあるから適当にまいといてw」

俺は言われたとおりそこら一帯の花々に水をかけた
本当にいい朝。

166: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:46:58.31 ID:xOEaU8jL0
一緒に庭で花に水やって
なんていい時間だったんだろう
今でも夢のようだ

ふざけてこっち向かって水うってきたりするんだ
やめろよーwなんつって、中学生か俺らは、って感じ
あーあ…

そんでその爽やかな気分のまま朝飯へ

168: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:48:17.60 ID:xOEaU8jL0
ご飯に魚に味噌汁という、日本の朝
彼女はバタバタして卵を食卓に持ってきた

彼女「やっぱこれがないとさーw〇〇君もかけるでしょ?」
と言って卵を割る
皆で笑いながら卵かけご飯
かくいう俺は卵+納豆かけご飯という最強タッグ

171: 名も無き被検体774号+:2012/11/23(金) 23:51:10.39 ID:ckXJL3YJ0
それ俺もやるわw
最高の朝メシだよなー

172: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:52:01.77 ID:xOEaU8jL0
最初こそ、俺がここにいて良いのかという疑問があったが
彼女の家の人はみんなとても優しい
もうすっかり俺はなじんでいた
そのまま婿に行きたいくらいだった

俺「今日はどうする?たっぷり時間があるよ」
彼女「出かけようー夏を堪能しようよ」
俺「車出す?楽だし」
彼女「はー?w歩くに決まってるだろー」
体力には自信がないけど、もっともだなと思った

173: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:57:02.55 ID:xOEaU8jL0
出かける頃は、すでに暑かった
太陽本領発揮と言った感じだ

俺「うぇ、すでにあちいなー」
彼女「今日は一杯歩くからタオルと水は持ってよね」

そう言うと彼女はタオルを渡してきた
案の定昨日と同じように麦わら帽子をかぶっていて、なんとも決まらない恰好だった

俺「なんとかならんの、それw」
彼女「うっさいよー」
と言いつつもその姿が段々と可愛いと思えてきた

174: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/23(金) 23:58:19.67 ID:xOEaU8jL0
まず、きた道をたどる
橋と小さな川が見えてくる

俺「車じゃ全然分からんかったけど、この川いい感じだねー」
彼女「涼しげだよ」
俺「よく分からんけどやたらと花が生えてる」
彼女「私もよくわからんw唐松草くらいかな分かるの。」

と言って彼女は楽しそうに俺を呼び寄せた

175: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:00:27.01 ID:xOEaU8jL0
橋の上からじゃよく分からないので
俺たちは川辺におりた

俺「あの花は?あのちっこいの」
彼女「わっかんないwこれは唐松草ー」
と言って彼女は俺にギザギザした花を渡してくれた

川いいなーと思って俺は靴を脱いで川に足を入れて遊びはじめた

177: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:02:55.38 ID:xOEaU8jL0
最初は彼女もためらっていたが、サンダルを脱いで参戦した
水はひんやり冷たくて、なんとも爽快だった ただ痛い

俺「気持ちいいねー夏だわーw」
彼女「涼しいねー」
俺「ただこれ気をつけないと怪我するね、痛い」

川に足をつけてぼーっとしてると彼女が水をかけてきたので
お互い、「綺麗に見えてこの水汚かったらどーする!」
とか言いながら水をかけあった

179: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:05:29.33 ID:xOEaU8jL0
少しはしゃぎ過ぎて疲れて、
川辺で二人で座って休んでいたら
彼女の母さんが車で通りがかった

母「こんなところにいたwあのさー」
彼女「どうしたの?」
母「もし時間あったら畑言って野菜とっておいてくれないー?
今日おじいちゃん達出かけるんだってー」
彼女「分かったー」
俺はぼーっとしてそのやりとりを眺めていた

180: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:10:12.36 ID:BzVorpZr0
彼女「だってさ」
こっちを向いて楽しそうに笑った
俺「じゃあ、行くか?」
彼女「行こう行こうー、夏野菜の収穫を味わえるとは幸せなことだよw」

野菜の収穫なんて、小学生のときの授業以来じゃなかろうか
思えば、その時の授業も彼女と一緒だったっけ

181: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:13:04.37 ID:BzVorpZr0
すると、彼女は急に走りだした

俺「ええ?どこいくの?!」
彼女「追いかけないとはぐれるよーw」
と面白がって駈け出した

俺「勘弁してよw」
と言って俺はハアハア言いながら彼女に走って追いついた

彼女「うそうそw一回家に戻るんだよ。」

182: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:20:04.72 ID:BzVorpZr0
家に着いて、俺は外で携帯灰皿片手に一服決めて、
彼女が出てくるの待っていた
煙草を吸うのもしんどい、
太陽の熱射線と、蝉の声が体をついた。

玄関の奥からバタバタと音がして、彼女が出てきた。
でも、さっきと何ら変わらない白いシャツにショートパンツ
てっきり農作業の恰好でもしてくると思ったのだが。

183: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:24:27.69 ID:BzVorpZr0
俺「あーれ、てっきり着替えてくるのかと。ジャージとか」
彼女「違うよー、これ!」
そう言って彼女はグイッとトートバッグのようなものを突き出した。

彼女「それに〇〇君と一緒なのにジャージとか嫌だよー」
俺、この時妙にこの一言にドキッとしたけど、
今思えば本当にどういう意図だったのか

俺「でも麦わら帽子はかぶるんだね」
彼女「仕方ないじゃん」

185: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:30:55.43 ID:BzVorpZr0
俺「でも、そんなに肌出てて大丈夫?虫とか日焼けとか」
彼女「大丈夫だよ、気をつけてるし」

確かに彼女は白かった
気を使ってなさそうで、案外そういうことに気をつけてるんだろう

俺は、玄関の脇の水道で顔をおろして水を飲んだ
すっげえ美味かった
でも蛇口が上を向かないから飲みにくいのなんの。

186: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:42:07.24 ID:BzVorpZr0
俺はそのまま彼女から渡されたタオルを冷水にジャブジャブと濡らした
すげえひんやりして気持ちいい。

俺「おい!これマジでやばいぞ!」
彼女「えー…」
彼女は最初こそ怪訝な顔をしてこちらを見ていたが
いざ、試してみると

彼女「何これー超いいじゃん!」
俺「だろー?」
そう言って二人で笑って、並んで冷たいタオルを首にかけて歩いた

188: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 00:56:21.10 ID:BzVorpZr0
来た道とは逆。山にそって道をゆっくり登っていく
あまり言葉も浮かばず、しばらく黙って歩いた。
ミミミミミミ…と蝉の声だけが耳を突いた

木陰を通っていたので直射日光こそなかったが、
むせかえるような暑さ。
彼女が大丈夫か、俺は常に
隣をチラチラ見て気にかけた

190: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 03:29:19.58 ID:BzVorpZr0
歩いていると、畑に着いた

俺「おお、けっこう広いんだね」
彼女「今日は、昨日使っちゃったんでまずは茄子をとります。」
そう言うと彼女は嬉しそうに軍手をポケットから取り出した

俺「俺のは?」
彼女「あ、素で忘れたwごめん、そのままやってw」
悪気なくこういうこともするんだ

191: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 03:30:06.92 ID:BzVorpZr0
楽しそうに野菜を採る彼女を見ていると、
なんだかとても可愛らしくて仕方なかった
畑にぼーっと突っ立って、自分が改めて恋をしていることに気付いた

とは言え野菜をとらないワケにはいかないので、俺も手伝う。

彼女「とうもろこしなってるかな、とってっちゃえ」
そう言うと彼女は器用にとうもろこしをとり始めた
俺も悪戦苦闘しながら手伝った

192: 1 ◆4eXsZeRoVc :2012/11/24(土) 03:33:21.78 ID:BzVorpZr0
彼女「たくさんとれたねー。〇〇君ありがとー」
彼女はトートバッグいっぱいに詰まった野菜を見て笑った
俺「野菜をとるなんて、なかなか貴重な体験だね。楽しかった」

重い?なんつってトートバッグの持つ取っ手みたいのを
二人で片方ずつ持った
まるでトートバッグを介して手を繋いでるように
ってかまあ、そうしないと本当に重いってのもあったんだけど

名作, 感動

Posted by wpmaster