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クズな俺でも夢を持った


1:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:28:21.07 ID:pAAX5QQj0
大学時代、就活に失敗。
そのまま卒業し公務員になろうと考えたが
上手くいくはずもなく、一年以上にわたり引きこもり生活を続けてた

そんな俺の話だが暇つぶしにでも聞いてくれ

 
 
2:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:28:58.75 ID:pAAX5QQj0
毎日午後4時くらいに起床。
起きてまず電気ケトルでお湯をわかしテキトーにカップ麺を食べる
そんでもって薄暗い部屋でパソコンに向かうだけ

それの繰り返し
たまに週間の雑誌を買いにコンビニ行くくらい
本当にクズな生活を繰り返していた



3:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:30:36.21 ID:pAAX5QQj0
別にコミュ障というわけでもなく
普通に友達もいてゼミもやって、バンドなんかも組んでたんだ
楽しく大学時代を過ごしたんだけど
就活は本当に厳しかった

内定もらえなくて、安易に公務員だ、と考えたが
それが間違いだった
大学4年の秋くらいからバイトもしつつ勉強も始めたが
それも最初のうちだけだった



5:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:31:31.42 ID:pAAX5QQj0
俺みたいなやつって案外結構いるんじゃないか
大学時代就職できなくて
まあ来年でいっか、って言ってうっかり卒業しちゃって
為す術なくなってひきこもりかフリーターになっちゃうヤツ

まあ俺の場合バイトしてたのも最初のうちだけで
あとは家に篭もってたから本当のクズなんだけどな



6:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:32:37.63 ID:pAAX5QQj0
大学卒業したあとの4月ころは
まだ公務員勉強とかそれなりにはやってた
でも普通に試験落ちまくって
マジで落ち込んだ

まわりの友達は「大変だー」と言いつつも
新しい世界、環境で、堂々と働いている
そう思った瞬間、俺は本当になにもやる気がなくなった



7:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:33:48.30 ID:pAAX5QQj0
そこからはマジでクズの日々
親には公務員勉強すると言っていたが

そんなものするわけもなく
毎日朝寝て夕方に起きる生活

次の年の春、24歳の誕生日を迎えた時
俺はいつも通り午後4時に起きて
ヒゲボーボーの顔をして家で独りでパソコンをいじってた
「ああ、俺の人生は詰んだんだ」ってなんとなく悟った



8:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:35:13.03 ID:/8ONhWbx0
そういえばずっと思ってたんだけど、ゼミって何?



11:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:36:49.44 ID:pAAX5QQj0
>>8
大学3年くらいになると、教授のもとに何人か集まって
同じテーマの元で研究するんだ
中高で言う、ホームルームのようなものと思ってもらってもいいかな



17:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:43:10.59 ID:/8ONhWbx0
>>11
なるほど
ずっとゼミって塾か何かだと思ってたわ



9:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:35:23.38 ID:pAAX5QQj0
俺だって好きでこうなったわけじゃない
焦りや不安、当然あった

周りの友達はみんな真面目に働いて
辛いながらもしっかり未来を見据えているのだろう
そう思うと吐き気が止まらなくて

必死に必死に現実を見ないようにしていた
毎日親の突き刺さるような視線が痛かった



12:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:37:29.41 ID:pAAX5QQj0
「明日は頑張ろう」
毎日そう思って眠りにつくけど
目覚めれば日が傾いていて何もかも嫌になる

そしてまたパソコンに夢中になって現実逃避
こーんな日々を大学卒業してから続けてたんだ
笑えてくるだろ?



13:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:38:26.47 ID:F4M256ed0
わかるぞ・・・わかるぞ・・・



14:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:39:13.15 ID:pAAX5QQj0
24歳になって少し経った5月頃
「こんなことなら、いっそのこと少し旅にでも出てみようかな」
という考えがよぎった
久しくコンビニ以外に出かけていなかったし
それもアリだな、なんてがらでもないことを考えた

本当に唐突な事だったが
そう思い浮かぶと、途端にワクワクし始める
色々と忘れられるし、家にいるよりずっと精神衛生にも良さそうに思えた



15:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:41:38.54 ID:pAAX5QQj0
何より、知らない人ばっかりのところに行きたかった
家にいると親の視線が痛くて仕方ない
申し訳なくて、後ろめたい気持ちもあったから尚更だった

思い立ったらすぐ始めないと辞めてしまう、と思い
その日の翌日には出かけることにした

そしてすぐに準備を始めた
携帯と財布に、煙草と缶コーヒー…
荷物は最低限に抑えることにした



19:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:50:58.27 ID:pAAX5QQj0
缶コーヒーなんて普段飲むわけでもないが、ちょうど家にあって
少し気取ったつもりで持って行こうと思った

パソコンで時刻表とかチェックしちゃって、久しぶりにワクワクしたな
その日の夜は「明日は予定があるな」って思うと
嘘のように穏やかに眠れた

「明日やることがある」
これって、実は本当に大事なことだったんだな



22:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:52:17.74 ID:JJvmCAFm0
>>19
生活に張りが出るよな
ちょっとした緊張が刺激になる



20:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:51:54.49 ID:pAAX5QQj0
次の日起きると、まだ太陽が低い位置にあって
これだけのことでなんか凄く晴れがましい気持ちになった

とは言え、9時をまわった辺りの時間だったので親は既にいなかった
俺はテキトーにお茶漬けをかきこんで出かける準備を進めた

とりあえずは、近所の在来線に乗っていけるとこまで行く心づもりだった
しばらく家をあける気もしたから
台所にあったブロックメモに
「東京の旧友に会いにいくのでしばらく帰らない」
という旨のメモを残しておいた



23:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:52:48.43 ID:pAAX5QQj0
もちろんそんなメモは嘘で
俺に会いにいくような友達もいない

そのまま家を出ると
まだ「午前中」って感じの賑やかさが街を包んでる気がして
とても新鮮に見えた

俺はよっぽど家を出てなかったんだな…ってつくづく実感した



24:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 17:55:18.98 ID:pAAX5QQj0
最寄り駅に着くと
時間帯もあってか人は少なかった
まあ田舎の駅だし、こんなハンパな時間に電車を使う人もいなかったのだろう

駅の横に作られた喫煙スペースみたいなとこで一服して、
次に来る電車を待った
行き先などは特に決めて無く、次に来た電車に乗ろうと考えていた



25:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:01:06.09 ID:pAAX5QQj0
そして、駅に入り、電光掲示板で次に来る電車を確認
そのホームに行ってしばらく突っ立っていると
電車がやってきた

この時、偶然この電車に乗ったことで
俺の人生は変わった

もし違う時間なら、違う路線なら、違う方向なら、と今でも思う。



26:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:01:40.02 ID:pAAX5QQj0
俺はそのまま電車に乗って、しばらく揺れていた
なんのことはない、フツーの電車のフツーの車内。

ついに旅に出た…と胸が高ぶっていたのも最初のうちだけ
揺られている間に眠くなり
俺は眠ってしまった 電車の揺れって気持ちいいもんな



29:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:13:47.32 ID:tHhmySkD0
俺もワクワクしてきた
しみじみ



30:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:14:14.27 ID:pAAX5QQj0
目が覚めて時計を見ると
一時間半近く経過していた
けっこう遠くまできたな…って思って
次の駅で降りることにする

そこは、地名は聞いたことがあったが初めて降りる駅で
下りて駅の看板を見た瞬間に一気にワクワクが込み上げた



31:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:15:13.20 ID:pAAX5QQj0
高原のようなところでそれなりに観光客もいるっぽくて
一気に自分の知らない世界に来たかのような感覚になった

もうお昼もまわっていい時間だったので
俺はテキトーにコンビニを見つけて昼飯をすませ
とにかく歩いて色々見てみることにした



32:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:17:42.02 ID:pAAX5QQj0
陽が傾き始めるまで色々まわってみたが
お洒落な喫茶店や、〇〇作り体験工房のようなものばかりで
まわればまわるほど俺とは無縁の場所に思えた

賑やかで楽しそうなのは結構なことだが
なんだかとても寂しい気持ちになった
そういうのを見ていると、あとすこしで
「俺に何してんだろう」って気持ちになってしまいそうで
旅に出た決意やワクワクがなくなりそうだった



35:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:22:09.48 ID:pAAX5QQj0
人通りの少ない外れた道を選んで
ゆっくり自然でも堪能して帰ろうか、と思って
少し道を下っていった

山側の斜面には草や木々が生えていて
人通りもあまりなくて、良い感じだなぁ~と浸りながら歩いていた
道を下り続けると割とひらけた場所に出て
ポツポツと民家があるのが目に入った



36:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:23:38.88 ID:pAAX5QQj0
夕焼けの強い日差しが俺を突いて、
正直もう歩き疲れもあったしで、どこかで休みたくて仕方なかった

ひらけた道を歩いていると、途中「民宿〇〇」と書かれた
薄汚れた看板が目に入った
割としっかりした感じの建物があり、敷地の中に駐車場があった

いかにも田舎の宿って感じで俺は一瞬で心を奪われた
こういう所に来たかったんだ



38:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:25:05.14 ID:pAAX5QQj0
俺はさっそくその敷地に入り
恐る恐る玄関を開けた
引き戸?っていうのかな、ガラガラ…って開けるやつ。

玄関を開けると脇に水槽があって、ジュースの自販機があった
番台のようなところに
「厨房にいます。御用の方は呼び鈴を鳴らしてください」
と書かれていた



39:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:29:14.07 ID:pAAX5QQj0
俺はいそいそと靴を脱いであがり
番台の上にあった呼び鈴を鳴らした

すると奥のほうから初老の女性が出てきて
「こんにちはー」と愛想よく言った
俺は「今日泊まれますか?」と聞いた

「宿泊ですね、大丈夫ですよ」と笑顔で応えてくれた
手続きを済ませると部屋の鍵を渡された



40:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:32:10.33 ID:kjB2SYWn0
俺も現在進行形でニート
引きこもりが生まれ変わる姿を見てみたい
支援



42:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:42:33.08 ID:pAAX5QQj0
そこで軽い世間話になって
若く見られたのか
「学生さんですかー?」とか聞かれたので
「今年で24ですよw」とか言ってはぐらかした

でもとても雰囲気の良い方で
この宿見つけてよかったなあって思った

部屋が3階だったので、しばらく部屋で外眺めたりしてマッタリして
頃合いを見て大浴場?のような所に行ってひとっ風呂浴びた
なんだかんだでけっこう堪能していた



43:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:44:37.19 ID:pAAX5QQj0
風呂出てぼーっとしてたら8時前くらいになってて
そういや夕飯食ってねえな、と思い

一階の受付へ行った
するとさっきの女将さんが出てきて
「あ、そういえばお夕飯の案内するの忘れてました…ごめんなさい」と言ってきた
どうやら夕飯は18時~食堂だったらしく、他のお客さんは食べた後だったようだ

俺は「いえいえ今からは申し訳ないんで」と言ったのだが
平謝りされ、俺だけ食堂に案内され遅れて夕飯をいただくことに



46:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:52:46.66 ID:pAAX5QQj0
食事の時間が終わった食堂は
ほのかに夕飯の香りが残っていたけどガランとしていた

俺が椅子に座ると
すみにあるソファに座ってテレビを見ていた親父さんが近づいてきて
女将さんと何やら話していた

そして俺の斜め前に「よっこらせ」と言って座った



47:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:54:00.86 ID:pAAX5QQj0
女将さんは奥の厨房でなにやらいそいそと準備をしていて
親父さんは俺の方を見て優しく笑った

親父さん「こちらのミスで、どうもすいません」
俺「いえいえ、遅かったこっちも悪いんですw」

親父さん「ビールでも飲みますか?」
と言って脇にあった冷蔵庫からビール瓶をとり出し始めた
「お言葉に甘えてw」と言って俺も差し出されたグラスを受け取る



48:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:55:16.83 ID:pAAX5QQj0
「乾杯!」と言ってカチンとグラスをぶつけた
この親父さんもとても人当たりのイイ人で、話しやすかった

そうしてるうちにご飯が運ばれてきて
テーブルの上はたちまち暖かい食卓と化した

親父さん「今日は一人で?」
俺「はい、気晴らしにw」
親父さん「さっき家内に24と聞いたけどまだ若いよね、お休み?」
と聞かれた
すると立って仕事をしてる女将さんも
「若いよねーw」と声をかけてきた



49:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 18:56:19.07 ID:pAAX5QQj0
こうなったらもう言ったれ、と思った
どうせ旅の出会い、もう会うこともないし

「あー…なんというか、自分仕事はしてないんです。
フリーターでもなくて…ニートみたいな…」

きっとこんな事を言ったらどんびかれるし変なヤツに思われるだろうなぁ
と半ば諦めも含めて覚悟していた



52:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:02:40.54 ID:pAAX5QQj0
ところが親父さんの反応はあっさりしていた
「そうなんだ」と言って笑ってみせた

親父さん「色々大変な世の中だもんなぁ、若い人は辛そうだよ」
と言って優しく笑って「ビールつぐよ」と言ってくれた
俺はかなりの決心で言ったのだが全然態度を変えることなく
驚いた、驚いたし何より嬉しかった



53:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:05:01.24 ID:pAAX5QQj0
そのあと女将さんも立ちながら話に参加していた
親父さん「それでここまで一人旅か、いいことじゃないかうんうん」
と言ってニコニコした
女将さんも、「このへんは馬鹿みたいに広くて自然があるだけだよねーw」
と言って笑っていた

俺は本当に心を打たれた
今まで自分にとって決して向き合いたくないレッテルだった「ニート」「ひきこもり」というものを
こんなにも暖かく受け入れてくれるなんて



54:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:08:20.95 ID:pAAX5QQj0
俺はそのあとビールが入っていたこともあって
楽しくて嬉しいのに、泣きながら自分のことを語った

今まで誰かに話したくてたまらなかったけど、誰にも言えなかったこと

自分がどれほど甘いかは分かっていて焦ってる
でも結局弱くて全然踏み出せないこと
まわりの友人達はどんどん立派に成長していく
それを痛感するたびどんどん相談できる人もいなくなって独りになったこと
親にはとても申し訳ないと思っていること

見ず知らずの親父さんと女将さんに、俺は自分の今まで溜め込んでいたことを
思い切り吐き出した

親父さんと女将さんも涙目になって「うん、うん」と話を聞いてくれていた



55:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:11:47.50 ID:zpbdQ804O
すでに泣いている‥



56:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:14:23.38 ID:pAAX5QQj0
親父さんも女将さんも、俺の話を親身になって聞いてくれて、励ましてくれた
今日会ったばかりの、ただの客にすぎない俺なのに

そのあと、親父さんに誘われて玄関の灰皿が置いてある場所に行って
一緒に一服した

親父さん「人生って長いよな。色々あるんだ」
俺「はい…」
親父さん「焦りなさんな、まだまだ〇〇君も始まったばっかり。
これからゆっくり歩いてけばいいんだよ」
俺はその言葉に黙って頷いた
喋ると、また泣いてしまいそうだった



58:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:18:18.87 ID:pAAX5QQj0
すっかり親父さんと女将さんとも仲良くなって
面映いような気持ちもあったが
胸に熱いものがこみあげていた

夜もとっぷり暮れていたので
俺は部屋に戻って寝ることにした
この日、俺は密かにもう一泊していくことを決めた

見知らぬ町に来て、とても大事な場所を見つけたような気がした



59:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:19:46.79 ID:pAAX5QQj0
その日はいつもより格段に良く眠れた
目覚めると家じゃない、ってのがすげえ新鮮で
目覚めた瞬間一人で「おー…」とか言っちまったw

下に降りて女将さんに挨拶する
もう一泊したい旨を告げると
「いいよーwチェックアウトとかそういうのもないし、あの部屋そのまま使ってねw」
となんだかとてもあっさり承諾された。



62:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:47:16.37 ID:pAAX5QQj0
朝飯を食べて、他のお客さんもぼちぼちいなくなり…
さて何しようか、となった。
とりあえず風通しの良い3階の部屋で窓から外を見つつ読書。
すごく気持ちいい、窓から見える景色はのどかな田舎の景色だった

読書をしていると部屋の外から掃除機をかける音や
パタン、パタンと女将さんやスタッフさんの歩く音が聞こえた
それもとても心地よくて
気付くと時刻は3時をまわっていた



63:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:49:16.69 ID:pAAX5QQj0
なんかすることないかな~と思い
フラフラと下に降りて
受付に女将さんがいたので話しかけた

女将さん「ゆっくりしてる?」
俺「とっても居心地いいですw」
俺「何か、手伝えることとかあります?」
と聞いたら
「とんでもないw」と言われて遠慮されたんだけど

少しして女将さんが思い出したように言った



65:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:51:37.25 ID:pAAX5QQj0
女将さん「あ、じゃあウチの犬の散歩にでも行ってみる?」
俺「ワンちゃんいるんですかw名前は?」
女将さん「ケンちゃんって言うんだけどね、まだ若い柴犬だよ」

と言われて俺はそれを喜んで引き受けた
女将さんいわく「そのへんを適当に歩いてきてごらん」とのことだった
散策にもなるし、一石二鳥だ

裏に回ると、とてもおとなしい可愛い柴犬と目があった
なるほど、これなら俺にも散歩を任せられるはずだ、と思った



66:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:56:53.93 ID:pAAX5QQj0
渡された袋とカニバサミのようなものを持って
俺はケンを連れてゆっくり敷地から出た

来た時の道に出て
この宿を見つけたことでまだ先に行ってないな、と思ったので
来た道をそのまま歩いて行ってみることにした

もう夕方だったけど
まだ日は眩しくてまだまだお昼くらいのように感じた



67:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 19:59:43.27 ID:pAAX5QQj0
よく分からない更地であったり、畑であったり
その中に家がぽつぽつとあって…本当に田舎だった
俺の住んでるところも田舎だが…それ以上に田舎だった
ちょっと小道にそれれば舗装されてない道もあって
車は大変そうだな~なんて思った

ケンもおとなしく歩いてくれるので気持よかった
ひとしきり歩いて
「空気が美味いなあ」と感じて
そろそろ帰るかーって思って来た道を引き返した



68:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 20:00:34.83 ID:aJmhOC800
いい人たちだなぁ



71:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 20:03:15.52 ID:rNVV+Yl80
でも>>1はMARCH以上の大学でしたってオチでしょ
もういいから



73:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 20:16:04.66 ID:pAAX5QQj0
>>71
いや、とんでもない
Fランだよ、はっきり言って



72:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 20:15:26.85 ID:pAAX5QQj0
来た道を引き返していると、
途中で一人の女の子を見つけた
犬を連れていて、向こうも犬の散歩をしているようだった

若い子で、高校生くらいだ
道ですれ違ったら振り向いてしまう位、俺には可愛く見えた

でもその子はとても険しい顔をしていた、人を寄せ付けないくらい
そして通りすぎる時、少し立ち止まって
ケンを見つめて俺を見て、とっても怪訝そうな顔をした



86:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 21:48:46.85 ID:pAAX5QQj0
そしてまだすぐにプイっと振り返って通り過ぎていった

俺は「なんだ?」と思って振り返った
するとまた20メートルくらい離れたところで
こちらを振り返って怪しそうな目でこちらを見ていた

「俺なんかやったかな…?」と思いつつも
気にしないようにして宿への帰路を急いだ
一瞬のことだったからその時はハッキリ覚えていなかったけど
とても儚げで不思議に見える子だった
宿に帰る道で、その子のことが頭から離れなかった



89:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 22:13:16.20 ID:pAAX5QQj0
宿に帰るとすっかり夕方
忙しい時間帯だった

宿の中は賑わっていて、バタバタしている
俺は先程の少女のこともあってなんだか落ち着かず
宿の受付前をフラフラしていた

すると玄関のはしっこに
「スタッフ募集」と書かれた紙が貼られているのを見つけた
俺はそれを見て一つ決心した



91:名も無き被検体774号+:2013/03/27(水) 22:28:06.46 ID:pAAX5QQj0
夕飯を食べた後、
人のいなくなった食堂に向かうと
親父さんはソファに座り、女将さんは厨房で何かしているようだった

俺が来たのを見つけると
親父さんは「やあ」と言って笑って近づいてきた
そうすると女将さんも気づいて
「あらどうもーw」と言ってくれた



96: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/27(水) 23:35:45.53 ID:pAAX5QQj0
親父さんはニコニコして「今日も飲む?w」
とか言いながら新聞を広げて斜め前に座った

カシャカシャと女将さんが洗い物をする音が響いていて
俺はしばらく黙ってテレビを眺めていた

言うか言わまいか、ドキドキしながら悩んだ
口を開くまでにけっこう時間がかかってしまった



104: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 00:21:12.68 ID:W/rZejtD0
俺「あの、玄関のスタッフ募集の紙見たんですけど…」
親父さん「おお、あれか」
俺「あれって今も…?」
俺は恐る恐る尋ねた

親父「パートさんの入れ替え激しいからね、いつもだねw」
俺はそれを聞いて意を決した



107: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 00:25:05.54 ID:W/rZejtD0
俺「ここでしばらく働かせてもらえませんか…?」
勇気を振り絞って言った

すると親父さんの顔から笑みが消え真剣な眼差しになった
親父さん「本気なの?」

俺「本気です」
俺は黙って親父さんの目を見ていた



108:名も無き被検体774号+:2013/03/28(木) 00:29:09.62 ID:PlZtH6gE0
追い付いたわ、これは良スレの予感



109: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 00:31:36.10 ID:W/rZejtD0
俺の言葉を聞いて親父さんは優しく笑った
親父さん「いいよ」
俺「本当ですか?」
正直びっくりした、まさか快諾してくれると思っていなかった

親父さんは「かあさーん」と言って女将さんを呼んだ
「使ってない部屋あったよね?」「ええ」みたいな会話を始めた
親父さん「家、遠かったよね?住み込みで大丈夫?」
と言われたので、俺も「はい、はい!」と勇んで返事をした



111: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 00:38:45.22 ID:W/rZejtD0
嘘のように軽やかに、話がどんどん進んでいく
「○○君、パソコンには強い?」「ちょうどWEBサイトを作りたかったんだ」
「洗濯の仕方分かるかい?」「子どものゲームの相手はできるかい?」
親父さんと女将さんがにこにこしながら話しかけてくる

「若い人が来てくれると活気がついていいねえ」
親父さんは笑顔で俺に言ってくれる

こんな、クズニートの俺にも生きる場所があった
ガキ臭いが俺はそんな風に思って
凄く凄く嬉しかったよ



113: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 00:46:39.78 ID:W/rZejtD0
俺はその日を境に、今までの俺から変わった気がした
なんでもやってやる、やりたい、と思えるようになった

親父さんに言われて次の日、さっそく実家に戻って荷物を持ってくることにした
親に民宿のパンフレットと名刺を見せて
「ここで働く事にした。住み込みだから、しばらく家を出る」
と伝えた

今までニートで家から出もしなかった息子の行動に
とんでもなく驚いていたようだが
「もう24なんだし好きにしろ。でもすぐに辞めるなよ」
と言われた



114: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 00:51:23.61 ID:W/rZejtD0
辞めてたまるか、と思った
人生詰みかけてた俺に、こんな転機は二度と無い
もう、あんな暗い部屋でうずくまっているだけの日々はごめんだ、と思った

でも、話があまりにもポンポンと進んでいく事に対する不安もあった
働くとは言え、パートと同じ扱いだし
先が見えないことに変わりはなかったわけだが、
この時の俺は「とにかく何か始めなければ変われない」
そう考えていた

もちろん、この考えは間違いではなかったし
電車に乗って旅に出て、本当に良かったんだ



116: 【Dliveetv1347375601300903】 本日の利用料 8,921円 :2013/03/28(木) 00:58:04.47 ID:HjNAwZqn0
一人旅は良くやるけどドラマチックな出会いとか皆無だなぁ…



117: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 00:58:14.97 ID:W/rZejtD0
そして俺は宿に荷物を持ち込んで部屋に入った
けっこう前まで住み込みの人がいたらしく、その人が使ってた部屋だ
4畳半ほどの狭い部屋

パソコンを置いて、布団を敷いたらほぼ一杯だ
でも、そんなの全然良かった
実家の鬱屈とした部屋に比べれば

今日からここが俺の新天地、そう思ってはりきった



118: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 01:22:45.66 ID:W/rZejtD0
親父さんに「仕事とかは明日からでいいよ」
と言われたので、俺はその日は一日プラプラすることに

夕方になって、あまりにも手持ち無沙汰だったのでケンの散歩へ行くことに
散歩しながら、もっとこの一帯の事を知ろうと思った
しばらく歩けば大きな国道にぶつかる事や、案外駅が近いと分かった

帰り道、一人で鼻歌を呟きながら帰っていると
この前会った女の子とまた出くわした



121: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 01:35:57.10 ID:W/rZejtD0
すれ違う際、また不審そうに俺のことを睨んでくる
さすがの俺も、きまりが悪かった

女の子「あなたこの辺りの人ですか?その犬は…」
と突然話しかけてきた
俺は慌てて、「○○さんの所で働くことになった者です…」と答えた

女の子は合点がいったように「ああ、それで」と呟いた
そして一言「失礼しました」と言って足早に去っていった
一体何だったんだ、と少々イラッとしたけど
ケンが俺の方を見て尻尾を振っていたので、そのままおとなしく宿に帰った



122: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 01:51:45.15 ID:W/rZejtD0
夕飯を食べたあと、食堂のソファに座ってテレビを見ていた親父さんに呼ばれた
親父さん「今日はゆっくりできた?どうだいこっちは」
俺「とってもいいところです」
そう言うと「そりゃ良かった」と言って親父さんは楽しそうに笑った

俺は心に引っかかっていた女の子の事を、親父さんに尋ねてみた
「今日、ケンの散歩してる時に女の子に話しかけられたんですけど…」
と一部始終を話した

親父さん「ああ、そりゃきっとカドワキさんとこの娘さんだね」



124: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 02:04:20.47 ID:W/rZejtD0
俺は思わず「え?」と聞き返してしまった
親父さん「すぐ近所の家だよ」
近所の子だったのか、となんだか申し訳なくなった

親父さん「この辺りはみんな知り合いみたいなもんだからね」
親父さん「○○君がケンを連れてるのを見て変に思ったんだろう。気を悪くしないでやっとくれ」
そういう事だったらしい。なんだか申し訳ないと思った

親父さん「うちにも回覧板を持ってくる事があるよ。会ったら挨拶してごらん」
俺は「はい」と答えたものの、ご近所がみな知り合いって感覚が新鮮だった



125: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 02:16:40.66 ID:W/rZejtD0
その後親父さんに「明日からは頼むね」って笑って肩を叩かれて
すっかり女の子のことは頭から抜けてしまった

そうだ、明日から俺は宿の一員となって仕事をする
こんな俺を拾ってくれたんだから一生懸命働きたい
俺はそう思って「任せて下さい!」って元気よく言った

4畳半の部屋で横になって、明日の仕事始めに備えた
嫌な気持ちなんてほとんど無く、ワクワクするくらいだった



126: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 02:23:59.96 ID:W/rZejtD0
宿の朝は早かった
まず起きて庭の草花に水やり、玄関の掃き掃除など
その後食堂で朝食の配膳を手伝う

慣れない仕事に戸惑いながらも宿の朝は賑やかに過ぎていく
その忙しさや活気が、なんだか俺には心地よかった
長年一人で篭もっていたことが嘘のように感じるほど

朝が過ぎれば各部屋の掃除に浴場清掃、ケンの餌やりに買い物等々
そして随時電話応対、予約の確認…
やることは本当に沢山あって忙しかった



127: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 02:28:29.23 ID:W/rZejtD0
すいません今日はこれで落ちます
続きはまた明日に書きますね

見てくれている人はありがとう



128:名も無き被検体774号+:2013/03/28(木) 02:29:12.38 ID:bBm793Dm0
待ってるぜよ



134:名も無き被検体774号+:2013/03/28(木) 02:56:05.36 ID:3PdgA7f/0
旅好きで安宿に泊まる俺には興味深いスレ。
支援。



175: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 23:07:39.67 ID:CtY83YxF0
>>1です
ちょっとパソコンの調子が悪いので携帯からです
遅くなってしまうかもしれないけど、ごめんなさい



180:名も無き被検体774号+:2013/03/28(木) 23:12:45.00 ID:LAOzOrx80
>>175
おかえりー!待ってたよー!



179: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 23:11:53.82 ID:CtY83YxF0
旅館での仕事は忙しかったが
どれもやりがいのあるものばかりだったと思う
ご飯の配膳をしていればお客さんに話しかけられるし
部屋をピカピカに掃除するのだって悪い気はしなかった

こんなクズニートの俺が、仕事を楽しいと思える
誰かの笑顔のためになってると思える
それが本当に嬉しくてさ
何より、親父さんと女将さんに本当に感謝してた



181: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 23:16:18.99 ID:CtY83YxF0
働き始めて間もない俺の事を
「○○君来てごらん!」「○○君調子はどう?」
と言っていつも気にかけてくれるんだ

そしてたまに、夜の暇な時間になると
食堂に俺を呼んで「どう、一杯?」と誘ってきたりする
優しくて温かい、でもどこかお茶目な
そんな人達だったんだ



182:名も無き被検体774号+:2013/03/28(木) 23:19:18.29 ID:0gZA9m1h0
「だった」ってことは…



184:名も無き被検体774号+:2013/03/28(木) 23:41:35.97 ID:LAOzOrx80
嘘だろ…



185: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/28(木) 23:48:10.06 ID:CtY83YxF0
そんな風にして、俺の人生初の仕事生活は
上手くいかないこともあったけど、順調に進んでいった

俺が働き始めてから間もなく、子供のいる家族連れが来た
宿の食堂には、大きなテレビとゲーム機が置いてあって
親父さんに「子連れさん来たから、ゲームを出しておいてね」と言われた

Wiiやプレステ3など、新しいゲーム機の中に
スーパーファミコンと、何やらスコープのようなコントローラがあった
俺はそれが何か分からず、手にとってまじまじと眺めた



186: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/29(金) 00:01:18.90 ID:IiE2+kBw0
俺「これは何ですかw」
親父さん「ああ、それね。スーパースコープ…だったかな?」
俺「ああ、聞いたことがあります」

確かに聞いたことはあったが、けっこう往年のもので、
俺は持っている人を初めて見たくらいだった

俺「なかなか珍しいものだと思うんですけど…」
親父さん「そうなの?うちの子が小さい時に買ったんだけど」
俺「あれ、子供さんいたんですか」



187: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/29(金) 00:03:46.76 ID:IiE2+kBw0
俺がそう聞くと親父さんは
「二人ね、いるんだよ」と言ったきり続けなかった
あまり話したげではなかったので、俺も詮索するのはやめた

そうか、二人には子どもがいたんだ
でもここに居ないということは、外に働きにでも出たのか
俺はこの時、その程度にしか思わなかった



190: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/29(金) 00:27:08.51 ID:IiE2+kBw0
そして夕飯が終わると、ゲームタイムだ
男の子の小学生の二人兄弟を相手に、Wiiスポーツやスマブラなどで激しく盛り上がる

「兄ちゃんふざけんな!」「今のはなし!なし!w」
などど言われながら、服を引っ張られたり叩かれたりするw
俺も童心に帰って楽しくゲームの相手をする

そのうちその子たちのお父さんや、親父さんまでもが混ざって
食堂はなんとも賑やかな雰囲気に包まれた



191: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/29(金) 00:30:30.63 ID:IiE2+kBw0
大の大人と小学生が一緒になって、ムキになって遊んでいるw
絶え間ない笑い声響いて、
こんな楽しいことが仕事でいいのか、と思うほどだった

夜もだいぶ暮れるまでゲーム大会は続き
ちびっ子たちは親御さんに促されて渋々部屋へと帰っていった

「兄ちゃん今度は負けねーぞ!」 そう言って指さして言ってくる姿がかわいかった



193: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/29(金) 00:52:12.21 ID:IiE2+kBw0
その後、玄関の外で親父さんと煙草を吸いに行った
俺が親父さんに「楽しかったですねw」と言うと
親父さんは優しく笑って、「こういう事がね、結構あるんだ。」と言った
「だからいいものなんだ。これからも、色んな人に会えるよ」

そう言って、俺の横で笑顔で煙草をふかした
俺はそれを見て胸が一杯になった
親父さんはどれだけの人に出会ってきたんだろう?俺もこれからどれだけの人に出会えるだろう?
街灯もまばらな真っ暗な庭で煙草を吸いながら、頑張ろうって思った



194: ◆GZ9LcuBAFk :2013/03/29(金) 00:55:56.38 ID:IiE2+kBw0
次の日の朝、俺が朝食の片付けをしていると
昨日の親子連れが俺のもとへとやってきた
するとお母さんが、「あの…良かったら一緒に写真撮ってもらえませんか」と言った

俺は驚いて、「え、僕ですか?」と変な声を出してしまった
「この子たち、昨日からずっと楽しかったってそればっかりでw」
「お兄さんと別れるのが嫌みたいで…」

そう言われて見ると、お母さんの後ろで恥ずかしそうにしている兄弟がいた



 
 
 

名作

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