新入社員「飲み会行きたくねえなぁ……」男「そんな時は飲み会代行サービスにお任せを！」

課長「今週の金曜は、みんなで飲みに行くか！」

係長「そうですね」

先輩「おっ、いいですねえ！」

OL「さんせー！」

新人「……」

新人（飲み会か……）

新人「はぁー……飲み会行きたくねえなぁ」

新人「今時、酒を飲んで親睦を深めようなんて流行らねえんだよ」

新人「つまらない話を延々聞かされるわ、プライベートな時間は潰れるわ」

新人「アルコールは少量でも体に悪いって研究結果も出たらしいし、デメリットしかねえ」

新人「なんとか出ないで済む方法ないかなぁ……」

男「そんな時は飲み会代行サービスにお任せを！」

新人「え？」

新人「なんだよ、あんた」

男「私、飲み会代行サービスを行ってる者です」

新人「飲み会代行サービス？」

男「簡単にいうと、あなたの代わりに飲み会に出て差し上げます」

新人「えっ！　ホント！？」

男「はい、飲み会に出たくないけど出なければならない……という人のために我々がいるのです」

男「料金は飲み代と多少の手数料を出して頂くだけでオーケーです！」

新人「変わったビジネスがあったもんだな」

こないだ友達代行業ってのが本当にあると知ってビビった

>>8
友達に誕生日パーティーをしてもらいましたって写真をSNSに投稿するために代行するやついるらしいで

新人「だけどさ、こういうのってやっぱり自分で出ないと……」

新人「飲み会だけで聞ける話とか聞けないじゃない？」

男「ご安心ください。飲み会で仕入れた情報は全てあなたにお教えします」

新人「そこまでしてくれるのか！」

男「いかがいたしますか？」

新人「じゃあ、ぜひお願いするよ！」

誰か俺の代わりに有給取って

課長「さあみんな、飲みに行くぞ！」

係長「はい」

先輩「行きましょう！」

OL「はーい！」

新人「あのボクは……」

課長「む、まさか来れないなんていうんじゃ……」ｷﾞﾛｯ

新人「いえ、代わりに彼が行きます」

男「どうも」

課長「そ、そうか……ではお疲れ様」

新人「お疲れ様です」

新人（やったー！　代行に頼んだおかげで参加せずに帰れるぞ！）

課長「では、カンパーイ！」

ｶﾁﾝｯ　ｶﾁﾝｯ　ｶﾁﾝｯ

男「……」ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞ

男「ぷはーっ！」

課長「おお、いい飲みっぷりだね」

男「そりゃもう！　引き受けたからには、はりきって代行させていただきます！」

課長「私が若い頃は……」ｸﾄﾞｸﾄﾞ

男「分かります、分かります。大変だったんですねえ」


男「先輩、グラスに注ぎましょう」ｻｯ

先輩「おっ、サンキュー」


OL「あなた、話おもしろーい！」

男「酒の席での話題ならお任せを！」

男「一発芸やりまーす！　まずモノマネから……」



ﾋｭｰﾋｭｰ　ﾋﾟｰﾋﾟｰ

先輩「いいぞー！」

課長「おお、すごいすごい」

係長「これは面白い」

OL「キャハハハハハ！」

男「じゃあ、支払いしてきますね」

先輩「会計までやってもらってありがとうな」

男「いえいえ、代行してるんですからこれぐらいやらないと」

男「本日はお疲れ様でしたー！」

男（さて……依頼人のところに行くか）

なかなか使える奴だな

男「無事、代行を済ませてきました」

新人「ありがとう、おかげで飲み会に出ずに済んだよ！」

新人「じゃあこれ、代行してもらった料金」

男「ありがとうございます」

新人「さっそくだけど、どんな飲み会だったか教えてもらえる？」

男「はい」

男「……こんなところですかね」

新人「なるほど……どうもありがとう」

新人「あと、俺のことなにかいってなかった？」

男「そうですね。新米なんだから、もっとメモを取る癖をつけた方がいいとおっしゃってました」

新人「そういや、あんまりメモ取らないな……気をつけないと」

男（本当はもっとキツイ言い方してたけど、マイナス情報はやんわりと伝えるのがコツだ）

課長「また飲みに行くぞー！」

係長「そうですね」

先輩「おっ、いいですねえ！」

OL「さんせー！」

新人「……」

新人（また代行を使おうっと）

ﾜｲﾜｲ…

男「カンパーイ！」ｶﾁﾝｯ

男「いきなりイッキさせていただきます！」ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞ

課長「いいぞー！」

先輩「すげー！」

OL「掃除機みたい！」

男「なんたって代行ですからね！　しっかり飲んで楽しませないと！」

課長「飲み会やるぞー！」

新人（また飲み会か……この人も好きだねえ）

新人（今のうちに代行に連絡しておくか）

先輩「……おい」ﾎﾞｿｯ

新人「なんでしょう」

先輩「今度の飲み会、お前また代行に頼むつもりか？」

新人「え……あの……」

新人（まずい……怒られる！）

先輩「勘違いするな、怒るわけじゃない」

新人「……へ？」

先輩「飲み会代行って、一人しかいないの？」

新人「いえ、“我々”っていってましたから何人もいると思いますが」

先輩「だったらさ、俺にも紹介してくれない？」

新人「え！　先輩って飲みが好きなはずじゃ……」

先輩「んなわけないだろー、金はかかるし、帰りは遅くなるし、飲みなんていいことないよ」

先輩「だからいつも代行を使うお前を羨ましく思ってたんだ」

新人「そうだったんですか……」

ほう

新人「分かりました！　これが飲み会代行業の電話番号です！」

新人「ここに電話すれば、きっと誰か紹介してもらえるはずです」

先輩「おっ、サンキュー！」



新人（意外だったな……まさか先輩が飲み会嫌いだったなんて）

OL「あのー」

係長「話があるんだが」

新人「なんですか、二人とも」

OL「あのさー、あたしにも飲み会代行の人を紹介してもらえない？」

係長「私も頼むよ」

新人「ええっ！？」

OL「だって、あたしも本当は飲み会なんて行きたくないもん」

係長「私も……できれば早く帰りたいんだ。しかし、いつも断れなくて……」

新人「かまいませんけど……」

新人（この二人も仕方なく参加してたのか……）

新人（どうやら次の飲み会は、課長以外みんな代行者になっちゃいそうだな）

課長「やぁ」

新人「か、課長！？　なにかご用ですか？」

課長「実は君に頼みがあるんだ……」

新人「なんでしょう？」

新人（もしかして、代行に頼らず飲み会にちゃんと出ろってことか？）

新人（たしかに課長一人じゃ可哀想だし、たまには……）

課長「私にも飲み会代行業の業者を紹介して欲しいんだ」

新人「ええええええええええ！？」

新人「なんで……！？」

新人「課長は飲みが大好きで、だからいつも誘ってるんじゃ……」

課長「正直いって、飲み会はあまり好きじゃないよ」

課長「ただ上司として飲み会をやらなきゃいけないって義務感だけはあるから誘ってるだけでね」

課長「本音をいえば、とっとと帰って寝たいよ。私だって」

新人「そうだったんですか……」

課長「というわけで、教えてくれ！」

新人「わ、分かりました……」

……

男「カンパーイ！」

代行者A「カンパーイ！」

代行者B「カンパーイ！」

代行者C「カンパーイ！」

代行者D「カンパーイ！」

男「いやー……まさか全員飲み会代行者の飲み会になっちゃうなんてな」

男「さすがにこんな事態は想定してなかったわ……」

ワロタ

みてる

男「この飲み会って……なにか意味あるのかな？」

代行者A「あると思うぜ」

男「え？」

代行者A「ようするに、会社の飲み会なんてのは“誘うこと”“参加すること”そのこと自体が大事なのさ」

代行者A「誘う側は、誘うことによって自分のリーダーシップやコミュ力をアピールできるし」

代行者A「出る方は出ることでグループの連帯感を尊重してるってことを示せる」

代行者A「まあ、一種の儀式だわな」

男「そうだけど……代行者を立てたら意味なくなるんじゃないか？」

代行者A「そんなことはないさ」

男「どうして？」

代行者A「世の中、代理を立てる儀式なんていくらでもあるじゃないか」

代行者A「今時の結婚式の神父、あれは本物じゃなくてバイトだって話だし」

代行者A「お遍路巡りだって代わりに行きますなんてサービスがある」

代行者A「三国志でも生首の代わりに饅頭を神に捧げるなんてエピソードがあるしさ」

男「うーん……理屈は分かるんだけどさぁ……。釈然としないっていうか……」

代行者A「ま、細かいことはいいじゃねえか！　おかげで俺たちは金もらって酒飲めるんだから！」

男「おう、そうだな！　深く考えるのはやめて、飲むとすっか！」

男「ウェーイ！」

ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞ…





おわり

落ちがないけど展開は楽しかったわ乙

発想はいい

乙
代行が新入りに取って代わる的なのを想像したがそうきたか

乙

乙
SSとか久しぶりに読んだわ