ドラえもん「異議あり!」スネ夫「異議あり!」
~ 犯人はのび太だ ~
神成「ワシは近所に出かけておった」
神成「帰ってくると、なんと家の窓ガラスが割れておった」
神成「窓ガラスの近くには、野球ボールが落ちておったんじゃ」
神成「そのボールにはハッキリと“のび太”と書かれていた」
ドラえもん『異議あり!』
ドラえもん「神成さん、今あなたはボールに“のび太”と書かれていた、といいましたね」
神成「そのとおりだが?」
ドラえもん「だけどのび太君が犯人なら、それはありえない!」
神成「な、なぜじゃ!?」
ドラえもん「先ほど提出された、このテストの答案を見て下さい」
ジャイアン「ただの0点のテストじゃねえか。俺でさえ15点だったってのによ」
ドラえもん「問題は点数じゃなく、名前の欄です」
しずか「名前? “野比のび犬”……あっ!?」
ドラえもん「そう、のび太君は、テストの問題だけでなく――」
ドラえもん「自分の名前すら間違えるんだ!」
ドラえもん「これは明らかにムジュンしています!」
神成「うむむむむむ!? た、たしかに!」
スネ夫「そんな……いくらなんでもバカすぎるだろ!」
ドラえもん『異議あり!』
ドラえもん「のび太君の頭の悪さは、君だってよく知ってるだろ」
スネ夫「ぐぐぅ!」
ドラえもん(のび太君を弁護してるのかしてないのか、よく分からなくなってきた)
ドラえもん「と、とにかく……」
ドラえもん「この“のび太”はのび太君自身が書いたんじゃなく」
ドラえもん「他の人間によって書かれた可能性があるのです!」
しずか「これだけでのび太さんを犯人とはいえなくなってきました」
しずか「スネ夫さん、他に証拠品はないのかしら?」
スネ夫「うぐ……」
スネ夫「えぇと、えぇと……」
ジャイアン『待った!』
スネ夫「ジャ、ジャイアン……」
ジャイアン「今度は俺様が証言してやるぜ」
ドラえもん「ジャイアン、いったいなにを証言するつもり?」
ジャイアン「そりゃもちろん――」
ジャイアン「のび太がガラスを割るその瞬間についてだよ」
ドラえもん「ええええええええええ!?」
のび太「ええええええええええ!?」
しずか「武さん……本当なの?」
ジャイアン「ああ、この目でハッキリと見たぜ!」
ジャイアン「のび太、俺様がこの手でお前を有罪にしてやらぁ!」
のび太「ううう……」
ジャイアン「のび太を有罪にしたら、記念にリサイタルを開いてやるぜ!」
ドラえもん(これは絶対にのび太君を無罪にしないと……!)
~ 俺はジャイアン、割ったのはのび太 ~
ジャイアン「俺は見たんだっつーの!」
ジャイアン「のび太が神成さんちのガラスを割るところをな!」
ジャイアン「まず、のび太はボールをつかんで神成さんちをにらんだ!」
ジャイアン「んでもって、ボールを投げ込んだんだ!」
ジャイアン「あれは神成さんが家に帰ってくるちょっと前だったから……」
ジャイアン「きっと穴掘りに飽きて、ガラスを割りたくなったんだろ!」
しずか「空き地へ行って、神成さんの家の窓ガラスを割ったというわけね?」
ジャイアン「そのとおり! どうだ、決定的だろ!」
ドラえもん「うむむ……」
のび太「デタラメだよ、そんなの!」
ジャイアン「なんだと!?」ギロッ
のび太「ひっ! デタラメじゃないです……」
しずか「それじゃドラちゃん、尋問をお願いします」
ドラえもん「分かりました」
ドラえもん(なんとしてもこの証言を崩して、無罪をつかみ取るんだ!)
ドラえもん(……リサイタルを阻止するために!)
~ 俺はジャイアン、割ったのはのび太 ~
ジャイアン「俺は見たんだっつーの!」
ジャイアン「のび太が神成さんちのガラスを割るところをな!」
ジャイアン「まず、のび太はボールをつかんで神成さんちをにらんだ!」
ドラえもん『待った!』
ジャイアン「なんだよ?」
ドラえもん「ボールをつかんだ時、のび太君になにか変わったところはなかった?」
ドラえもん「たとえば手袋をつけてたとか」
ジャイアン「ハァ? そんなもん、素手に決まってんだろ」
ドラえもん「…………」
ドラえもん「とても重要です」
しずか「分かりました。武さん、証言の追加をお願いします」
ジャイアン「任せとけ!」
ドラえもん『異議あり!』
ドラえもん「のび太君がボールをつかんだ時、素手だった……それはおかしいですね」
ジャイアン「な、なんでだよ!?」
ドラえもん「ガラスを割った凶器のボール、これを見て下さい」
ジャイアン「……なんでえ、キレイなボールじゃねえか」
ドラえもん「そう、キレイなんだ。ピカピカで、ほとんど汚れがない」
ドラえもん「だけどこの時、のび太君は答案を隠すために手で土を掘っていた」
ドラえもん「なら、このボールには土がついてなきゃおかしい!」
ジャイアン「ぐへえ!」
泥だらけの手がこんなところでいきてきた
スネ夫「そうだ……きっと手を洗ったんだ!」
ドラえもん「残念だけど、そうはいかない」
ドラえもん「のび太君の手は今も土だらけだもの。洗ってなんかないよ」
ドラえもん「なにしろ普段もろくに手洗いしないんだから。ばっちいったらありゃしない」
スネ夫「ぐううっ……!」
のび太「ぐううっ……!」
ジャイアン「いい考えがあるっていったのはお前じゃねーか! 追い詰められてるぞ!」
スネ夫「そんなこといわれても……ぼくだけのせいにしないでよ!」
ジャイアン「なんだと!?」
のび太「どうしたんだろう? 言い争ってるよ、あの二人」
ドラえもん「…………」
ドラえもん(――あの二人、まさか!)ハッ
ドラえもん「それでボールにのび太君の名前を書いて、空き地に呼び寄せて」
ドラえもん「彼に罪を着せようとしてるんじゃないの?」
スネ夫「!」ギクッ
ジャイアン「!」ギクッ
神成「なんだと!? 本当か!?」
のび太「えええええ!? ひどいよ、二人とも!」
スネ夫「ぼくたちが犯人? だったら証拠を出してみろよ!」
ジャイアン『異議あり!』
ジャイアン「そうだぜ! 法廷は証拠が全てなんだろ!?」
ドラえもん「うう……」
しずか「ドラちゃん、あの二人が犯人だっていう証拠があるの?」
ドラえもん「そ、それは……」
ドラえもん(そんなの、あるわけない……!)
ジャイアン「のび太が犯人だってのによ!」
神成「う~む、今の段階だと、やはり怪しいのはのび太という少年だなぁ」
ドラえもん(ううう……ここまでか……)
ドラえもん「ごめん、のび太君……ぼくが頼りないばかりに……」
のび太「しょうがないよ、ぼくなんかが逆転できるわけがなかったんだ……」
ドラえもん(逆転……!?)
ドラえもん(ここから逆転するためには……)
ドラえもん(そうか、発想を≪逆転≫させるんだ!)
ドラえもん(証拠はもう“どこにもない”と考えるんじゃなく)
ドラえもん(たとえば、犯人が“どこかに隠した”と考えるんだ!)
ドラえもん(事件が起きた場所を考えると、隠している場所は……あそこしかない!)
逆転の鼓動!
ドラえもん「弁護側は……証拠を提示する準備があります!」
しずか「えっ!?」
のび太「ええっ!?」
ドラえもん「正確には、証拠が今どこにあるかを明らかにする自信があります!」
しずか「……いったいどこにあるの?」
ドラえもん「それを示す証拠品は、これです」
ドラえもん『くらえ!』
ドラえもん「この図には、神成さんの家と空き地の土管が描かれてます」
ドラえもん「弁護側は、この土管の≪家宅捜索≫を要求します!」
ジャイアン&スネ夫「!?」ギクッ
ドラえもん「きっとスネ夫たちの野球グローブとサインペンが出てくるはずだ」
ドラえもん「空き地で物を隠す場所といったら、ここしかないからね」
ドラえもん「それが発見されれば、二人の犯行は明白になる!」
ジャイアン「ふっ、ふざけんな! そんなことさせるかよ!」
スネ夫「そうだそうだ! プライバシーの侵害だ!」
ドラえもん(空き地の土管にプライバシーもなにもないと思うけど……)
ドラえもん「なら、こっちだってこれぐらいのことをする権利はある!」
ドラえもん「君たちはぼくらが土管を捜査するのを大人しく見てることだ」
ドラえもん「――なにもやましいことがないのならね!」
スネ夫「ぐ……ぐぐぐ……ぐ……ぐ、ぐ……ぐ……」
ジャイアン「う、ううう……ううう……う、う……う……」
ジャイアン「ホゲェ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
……
……
……
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