DQNネームの教え子と私の話
1:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:27:51.38 ID:At9VA+W60
ということを、念頭に置きつつ。
2:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:30:28.63 ID:At9VA+W60
そこそこの進学校だけれども、モンペが多いと有名。
まあ、モンペごとき大したことないわ、と思いながら私は教師生活を始める。
が、ここで恐ろしさを知る。
受け持って最初の学級で、その片鱗を見た。
別にDQNネームが多い学校じゃない。
そもそも、まだDQNネームが浸透し出した時代でもない。
しかし、名簿にはとんでもない名前があった。
「山田王子」
王子(ぷりんす)
3:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:32:02.72 ID:At9VA+W60
と、思ったけれど、冗談が名簿に書かれているわけもない。
彼は、もこみちみたいに驚くほどのイケメンなわけもなし。
まあ、そこそこの顔だった。
ハライチの細い方を綺麗にした感じ。
市原隼人の劣化版みたいな。
4:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:34:20.41 ID:At9VA+W60
というのも、本人が良い子だったからである。
授業も普通に聞いているし、クラスのカーストで言えば上位の方。
ああいうルックスは女子に受けるのかしら、と思ったが、勿論「ぷりんす」という名前が邪魔をしていた。
誰も「ぷりんす」なんて呼んではいなかったが。
そんな中、面談で私は王子の母親に会うことになる。
5:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:36:17.08 ID:At9VA+W60
見た目は。
中身が問題である。
私はもちろん、心してかかっていた。
「ぷりんす」なんて名前をつけているんだから、まともな人ではないだろう。
そして面談が始まったが、やはりまともな人ではなかった。
事あるごとに「ぷりくんはね」「ぷりくんの」「ぷりくんが」
ぷwwwwwwwwりwwwwwwwwwwwwwくwwwwwwwwwwwwんwwwwwwwww
プディングに聞き間違えそうだった。
6:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:37:44.18 ID:At9VA+W60
可哀想だなあ、とは思いながらも
「あなたの息子さんの名前って変わってますよね」
とは言えない。
その日は何事なく面談が終わった。
王子は帰るときに、私を見かけると
「うちの親って変でしょ」
と言った。
笑顔で肯定しておいた。
8:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:39:53.39 ID:At9VA+W60
そこで王子との関係もおしまいかな、と思ったが、なんとなくずるずると面倒を見ていた。
他愛無い話ばっかりだけど、たまに学校を訪れる王子は可愛らしいものだった。
もっとも、名前では苦労しているらしかったが、それも大学ではネタらしい。
しかし、その「ぷりんす」という名が王子に脅威を与えるのは、大学四年になってからだった。
9:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:42:21.92 ID:At9VA+W60
当時はこんな変な名前の風潮が無く(もちろん、今の時代でも浮くレベルの名)、この名前は就活で足を引っ張った。
ちゃんとした大学を出るにも関わらず、王子は書類のみで落ちる、落ちる、落ちる。
結果、全滅だった。
面接にも漕ぎつけられない、というのは、どう考えても名前のせいだと思う。
私だって、挨拶に来た社員が「山田ぷりんす」なんて名刺を出したら笑うと思う。
しかし、これは王子にとっては死活問題であった。
生活がかかっているんだから、当然だわな。
10:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:45:14.69 ID:At9VA+W60
それを報告しに来てから、彼はしばらく学校に来なくなった。
来ないのが当然なんだけれど、定期的に来ていたヤツが来なくなったら、なんか不安になる。
私は王子の作業現場を、気儘に見に行くことにした。
これが間違いだった。
車の中から、王子の現場をちらーっと見た。
王子は下の名前で呼ばれて、「ぷりんす!」って誰かが呼ぶたびに大笑いが起きていた。
いじられキャラ、とかじゃない。
王子はガチで嫌そうな顔をしている。
あーあ、そこそこ端正なお顔を汚してしまいおって。
教え子がこうなっているってのは、胸が痛かった。
12:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:46:35.35 ID:At9VA+W60
「よう!」
なんて声をかけ、車に乗せて飯を食いに行った。
王子に近況を聞くと、最初は笑って話していたのに、途中から泣き始めた。
見てられないなあ、と思った。
とりあえず、たまには飯を食おうよ、なんて話をして、その日は解散となった。
13:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:46:46.78 ID:AkN3mgzvO
結局は自分の為に付けているんだよな
「上司から馬鹿にされないように無難な名前を付けよう」とか
「近所の奥さんに言っても恥ずかしくない無難な名前にしよう」とか
その結果大輔や博美みたいな凡名が増える増えるw犯罪者も増える増えるw
15:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:51:08.73 ID:At9VA+W60
このときはじめてモンペの恐ろしさを知る。
彼女は、会議のときに私の名を挙げ、
「1先生は授業中に黒板をお消しになりますよね?」
「はあ」
「それで粉が飛ぶので、子供の体にも害が与えられているんですよ!」
「?」
「ですから、黒板を消さないよう、文字は小さく書いてください」
と、まさしくモンペのテンプレのような主張をした。
ぽかーん、という空気が漂っていたが、ファビョる彼女に教頭が謝罪するよう、私に要求し始めた。
16:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:53:00.49 ID:At9VA+W60
別にいいや、という不思議な気持ちが働いた私は、
「おたくが学校中の黒板をホワイトボードに替えて下されば構いませんよ」
と発言した。
どうせ辞めさせられるな、と察した私は、この日のうちに便箋に退職届を書いてさっさと引き継ぎをした。
17:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:55:53.28 ID:At9VA+W60
ついでにホワイトボードに使うペンを同封しておいた。
大学在籍中に、ちょっとした資格を得ていた私は、それを使って働くことにした。
収入はむしろアップした。
人生ってどうにでもなるなあ、なんて呑気なことを考えていた私のもとに、久し振りに王子からメールが来た。
折角なので会おう、という話になり、私は王子と食事をしに行った。
そこで「辛い」という話を聞く。
考えてみれば、王子も一年近く職場で我慢していたのだ。
18:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:58:11.81 ID:At9VA+W60
「じゃあもう職場やめろよ」
と無責任な発言をする。
王子もそれを無責任だと感じたらしく、
「仕事場辞めたら、どうすればええんかわからんやろ」
と、至極真っ当な発言をした。
教え子だし、責任くらいは持ってやるか、という軽いのか重いのかわからない気持ちで、私は彼に
「私がお前一人くらい養ってやるよ!」
と大口を叩いた。
これで王子と婚約した。
自分でもどうかしていたとしか思えない。
20:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:59:54.13 ID:At9VA+W60
なるようにしかならない。
結婚に関して、うちは親がいないから問題は無かったけれど、片方の問題が勃発した。
そう、忘れてはならない。
「ぷりんす」という元凶の名付けをした、あの母親である。
私はとりあえず向こうの家に挨拶をしに行くことにした。
実に数年前の面談ぶりである。
23:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:01:18.89 ID:At9VA+W60
豪勢な名前には似合わず、なんて言っちゃ悪いか。
ここで両親に会う。
母親は私を見るなり、「え?見たことあるくね」みたいな顔をしたが、その通りである。
何も間違ってはいない。
私は王子両親に挨拶をした。
一連の流れも話す。
すると、当然のように母親が怒りだした。
21:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:59:58.12 ID:76Ya5p3W0
25:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:03:39.70 ID:At9VA+W60
昔っからこういう適当な性格があだとなることもあれば、吉と出ることもあった。
やっぱり、元教師だからかなあ、と思ったが、彼女の怒りの矛先はそこではない。
「ぷりくんのお嫁さんがこんな冴えない人でどうするの!」
「道子(私の名前)? 名前まで冴えない!」
「ぷりくんの名前には合わないよね!」
合うやつなんていねえだろ、と心の中で思った。
はずが、口にしていた。
19:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 10:59:09.97 ID:V1rCUGrw0
22:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:01:09.21 ID:O0f7vRGS0
26:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:08:18.15 ID:O0f7vRGS0
27:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:08:19.89 ID:At9VA+W60
王子には私のマンションに住んでもらい、家事手伝いでもしてるように言っておいた。
毎日のように王子の携帯には母親から連絡があったが、王子は適当にそれを受け流していた。
もちろん、王子両親がマンションに来ることは一度も無かった。
王子が細々バイトしてたこと以外、特筆すべきこともないので一年くらいすっ飛ばす。
で、男の子が生まれた。
まあ当然の流れではある。
どうでもいいけど、王子とのセクロスが初めてだった喪の私は、セクロスでさえ耐えられなかったのに出産なんて無理だわ、と思っていたが、案の定、出産の際、軽く意識が飛んでた。
痛みには弱いタチらしい。
子供には「悠太郎」みたいな普通の名前をつけた。
ここで問題が勃発。
29:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:09:46.99 ID:AoUas/kt0
30:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:10:10.96 ID:At9VA+W60
うちの子を見るなり、
「悠太郎! 冴えない冴えない!」
「王子の息子なんだから、もっとお洒落な名前をつけよう!」
「天馬(ぺがさす)とか!」
以後、彼女はマジで悠太郎を「ぺがくん」と呼び、二日後には改名手続きを調べて来た。
改名手続きができるなら、王子にさせてやれよ。
33:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:12:06.38 ID:At9VA+W60
悠太郎は王子そっくりの細い目をさらに細めて、王子母をじいっと見ていた。
とくに笑いもしない、無愛想な孫である。
私は王子母に
「以後、ぺがくんと呼べば出禁にしますよ」
と告げた。
近所中で、「道子は鬼嫁」という噂が広まった。
王子母、こっちに住んでないのにとんだスピーカーである。
32:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:11:51.83 ID:76Ya5p3W0
その母親の名前は?
34:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:14:53.21 ID:At9VA+W60
道子とどっこいどっこい。
鬼嫁とか呼ばれようが、どうでもいい。
とりあえず悠太郎は悠太郎である。
それに王子母は近所に住んでないしいいか、なんてお気楽な考えをしていた。
が。
ある日、公園で三人で遊んでいたら、見知らぬお母様に
「天馬なんて名前を付けちゃって、何を考えてらっしゃるんですか」
と、めっちゃ怒られた。
聞くと、悠太郎の名前は近所では「天馬」ということになっているらしい。
35:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:16:56.82 ID:At9VA+W60
ということで、王子両親を呼んで大会議。
会議なんて教師だったとき以来である。
王子母は我が家に着くなり、猫撫で声で、
「ごめんね、道子ちゃん。天馬なんて」
「そうですよ、お母さん。うちの子は悠太郎です」
「でね、新しい名前の案を持って来たの」
どうやらお母さんと会話はできないらしい。
37:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:19:20.92 ID:76Ya5p3W0
ちょっとこの母親、好きになってきたw
38:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:19:48.22 ID:At9VA+W60
「道子ちゃんって、どうもありふれたお名前に固執してるみたいじゃない?だから、そういう方向性で私も考えてみたの」
方向性もクソも、既にわが子の名前は悠太郎で届を出してある。
まあペラペラと気が済むまで喋ってくれればいいや、と思って
「はあ、それで?」
と、王子母に先を促すと、彼女はすっごい満面の笑みで、
「こういう名前なんてどうかしら?」
(これだけは本当に出された名前を書きます)
笑太(わらった)
クソワロタwwwwwwwwwwwwwwww
クソ笑太wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
斜め上の発想。
39:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:21:16.27 ID:tJO9feJ50
40:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:21:22.44 ID:M9+X/iAF0
42:名も無き被検体774号+:2012/09/16(日) 11:21:53.76 ID:At9VA+W60
だけど「わらった」って、動詞?過去形?
私は腹を抱えて笑った。
笑いまくって、王子両親には帰ってもらった。
王子は「親と縁を切る」って怒っていたけど、別にいいか、と思ったので止めておく。
面白さの方が勝っていた。
笑太なんてネタな名前をつける両親、他にはいないぞ、王子。
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