同じ境遇で育った親友が狂った話をする
ある日、昔の話をした
中学時代のたわいもない話だ
彼は無言で相槌を打っていた
その日は特別体調が良いらしく、ビールを飲んでいた
俺もビールをもらい、飲んでいると酔いが周り、何故か感傷的になった
今でも後悔しているが、中学時代俺を救ってくれた事に対する感謝を始めて彼にしたのだった
お前がいなければ、俺は生きていけなかった
思春期に始めて優しくしてくれたのはお前だった
お前がいたから今の俺がいる
こんな有り体の事を伝えると、彼は一言こう言った
「それはよかったよ」
それからの日々は相変わらずだった
会いに行くと、死んだように眠る骨と皮の人間がいた
ごく稀に、過食をして、部屋中が嘔吐物塗れの時もあった
腕を切って血だらけの時もあった
自分の名前をググり、その情報を印刷したものを部屋中に貼ったりしていた時もあった
そして一度だけ、俺の大好きな豚汁を振舞ってくれた
彼自身は一口も食べなかったが、何故か俺の大好物を作ってくれた
本当に嬉しかった。全部一人で食ったな
高校三年の12月
いつものように彼の家に行った
彼はいつもの居間のソファーではなく、奥の寝室のベットで寝ていた
居間のテーブルはやけに片付けられて、その上には一つのノートがあった
何気なくそのノートを開いてみる
どうやら、精神病が悪化してから書き始めた日記のようだった
ただ、最近の日記には、あまりにも汚い字で同じ事ばかりが書いてあり、到底日記と呼べるものではなかった
「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」
他の文章もあったが、この二つの文章ばかりが目立った
察しのいい人なら、これが何なのかわかると思う
そして年末、彼は死んだ
ある川の辺で、睡眠薬を大量に摂取して死んだ
彼の母親がわざわざ連絡してくれた
いきなり自殺をもってきたのは、これくらい唐突に彼の自殺が訪れたからだ
遺書には赤裸々に彼の想いが綴られていた
どうやら彼は、俺の家庭環境を引っ越してから直ぐに知り、だからこそ友達になってくれたのだという
彼の家も悲惨な状態だった
だから、彼も誰かに必要とされたかったのだろう
俺はまんまと彼の思惑にハマった。彼は最高にいい奴だった
そしてそれは、中学の終わりまで続いた
ところが、高校になり、俺は新しい宿先を見つけた
俺が父親に対して、否定の依存をしていた通り、彼もまた俺に、強い依存をしていたのだ
彼は、俺を救う事を思春期に於いて、唯一の生き甲斐にしていたのだ
俺が案外普通に高校に馴染んだ事が彼の心に大きく傷を付けたのだ
実は、虐められて高校を中退したのも嘘だった。これは親も含めて全ての人を欺いていた嘘だった
俺から必要とされなくなり、無気力になってやめていたのだった
そんな事も知らず、彼を救おうとしていた俺は、どんだけバカだったろうか
彼は辛かっただろう。もう彼がいなくても生きていける俺が急に現れ、原因である俺に救ってもらおうとしているのだから
「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「生きていけなかった」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」「今の」
この言葉の真意がわかったのはこの頃だった
生きてはいけなかった。という事は、今は生きていけるって事は
今の。という事は、昔とは違うという事
つまり俺は、死に近付く彼に、致命傷を負わしてしまったのだ
もうお前は必要ないと関節的に伝えていたのだ
高校は辛うじて卒業したが、進学も就職もせず、ただひたすら、彼への発言の一つ一つを悔やんだ
その間に、アルコール依存性になり、入院もした
自分が悪い点も沢山あるし、一概には言えないが、俺にとって両親は間違いなく人生を狂わせた元凶
なのに、その両親が真摯に介護をしてくれ、支えてくれた
最初は例によって恨んだ。ふざけるなと。ここで両親に救われたら、今までの苦しんだ自分を全否定すると思った
だけど、あまりにも堕落してそんな思いも弱かった
今でも恨みは消えない
だけど、そろそろ自分で生きていきたくなった。だから無理矢理両親を尊敬していると思い込み、何とかバランスを取った
それから俺は中学の文集を探しモコミチのを読んだ
あまりお硬いクラスではなかったので、将来の夢と、好きな事を各々が好き勝手に書き殴っていた
モコミチの将来の夢は、町工場で働くおっちゃん
好きな事は、ジェンガだった
それから何とか社会復帰をした俺は、親のすすめで大学へ進学した
勉強を出来るような状況ではなかったので、地元のFランに進学した
初年度は一度も学校に行かなかったが、二年目から何とか通い、今年、どうにか就職にまでこぎつけました
とりあえず、落ち着いたので、何となく思い出したので書いてみました
泥酔状態で書いたので、乱文だったと思いますが、付き合って頂いた皆様ありがとうございます
書いてちょっと心が落ち着きました
それでは
乙
面白かった
人間って脆くもあり、強くもあるね
やっと追いついたら終わってた
国Ⅰキャリアの家庭には多いのかね
うちもそうだったわ
1は頑張れよ、乙
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